セッション情報 シンポジウム11(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝疾患に対する先端医療

タイトル 肝S11-12:

肝硬変に対する脂肪組織由来間質細胞による肝再生療法開発

演者 酒井 佳夫(金沢大・消化器内科)
共同演者 関 晃裕(金沢大・消化器内科), 金子 周一(金沢大・消化器内科)
抄録 【目的】肝硬変は、非代償期に至った場合の予後は極めて不良な重篤な状態である。肝予備能を維持改善させる肝再生療法の開発が望まれている。脂肪組織は、骨髄と同様、間葉系組織で、肝細胞へ分化する間葉系幹細胞を有し、肝再生療法開発への応用が期待される。マウスモデルを用いて、脂肪組織由来間質細胞による肝再生療法の安全性、有用性の前臨床検討を行った。【方法】C57Bl/6およびGFPトランスジェニックマウスの皮下脂肪より間質細胞を獲得し、分離、継代した。C57Bl/6マウス(8週齢、♀)に、高脂肪動脈硬化食を給餌し、非アルコール性脂肪肝炎、肝硬変モデルを作成した。非肝硬変マウスおよび肝硬変マウスに対して、脂肪組織由来間質細胞を経脾的に投与し、安全性および肝硬変に対する有用性を評価した。【成績】獲得した脂肪組織由来間質細胞群には、間葉系幹細胞マーカーであるCD105陽性細胞が約40%存在した。1.5x105個の脂肪組織由来間質細胞を経脾的に投与した非肝硬変マウスにおいて、5日後血清トランスフェラーゼの上昇は認めなかった。24週間高脂肪動脈硬化食投与を投与したマウスの肝は、組織学的に高度の線維化を認め、分離獲得した肝実質細胞におけるアルブミン発現は低下していた。32週間高脂肪動脈硬化食投与した肝硬変状態のマウスに、1x105個の脂肪組織由来間質細胞を経脾的に隔週で2回投与し、最終投与2週後に検体を採取し検討を行った。脂肪組織由来間質細胞群では、PBS投与群に比較して、線維化領域の減少、α-SMA陽性細胞が減少し、抗線維化効果が示唆された。また、免疫組織学的に、肝内のCD11b陽性細胞数、F4/80陽性細胞数が減少した。肝実質細胞でのアルブミン、α-フェトプロテインの発現は、コントロールと比較して有意に上昇し、肝再生と肝予備能改善が示唆された。【結論】肝硬変に対する脂肪組織由来間質細胞の経脾的投与による安全性、および肝硬変に対する抗炎症効果、抗線維化効果、および肝予備能改善効果が示唆された。
索引用語 脂肪組織由来間質細胞, 肝再生