セッション情報 シンポジウム10(消化器病学会・肝臓学会合同)

C型肝炎治療の新たな展開

タイトル 肝S10-8:

ALT値の安定化を目指した少量Peg-IFN/RBV併用療法の試み

演者 市川 雪(信州大・消化器内科)
共同演者 松本 晶博(信州大・消化器内科), 田中 榮司(信州大・消化器内科)
抄録 【目的】C型慢性肝炎に対するIFN療法の著効率(SVR率)は上昇してきている。一方、高齢や副作用のため、SVRが得られない患者も存在する。今回我々は、これらの症例に対しPegIFNα2b/RBV少量併用療法で、生化学的治癒(SBR)を目指す治療法について検討した。【対象と方法】1群(後ろ向き研究)当院および関連施設にて、PegIFNα2b/RBV療法を導入され、治療効果を判定し得た120例(男性65例、年齢範囲17~61歳、SVR率45%)。2群(前向き研究)前IFN治療非SVR例で、その後肝機能異常を示した9例(男性3例、年齢53~75歳)。【結果】1群においてPegIFNα2bまたはRBVの総投与量が50%以下の群と、それ以外の群におけるSVR率はそれぞれ5% vs 55%と有意差を認めたが(P<0.001)、SBR率は 61% vs 78%であり、有意差を認めなかった(P=0.106)。また、年齢<49歳、50~59歳、60~69歳、70歳≦の4群に分けて比較すると、SVR率はそれぞれ 71、51、42および22%と高齢者で有意にSVR率は低下していた(P=0.039)。それに対し、SVR+SBR率は 78、68、71、62%と有意差は見られなかった(P=0.151)。ISDR変異、コア70番変異、Th1/Th2を用いた治療効果予測群別でもSVR予測群では90%以上のSVR率が得られていたが、中間群および非SVR予測群でもSVR+SBR率は約60%であった。以上の結果をふまえ、治療開始より半量投与を行い、SVRではなくSBRを目指す前向き検討を開始した。HCV RNAは治療開始後横ばいであるのに対し、ALTは速やかに低下し8週時点で正常化率は88%である。Hb、血小板および好中球数の低下は見られていない。また、治療開始前AFPが高値を示した2例では治療開始とともに低下した。【結論】通常のSVRを目指したIFN治療が難しい症例、または、SVRが得られなかった症例に対して、PegIFNα2bとRBVを半量に減量した少量併用投与療法によりSBRを目指すことにより、予後を改善できる可能性があることが示唆された。
索引用語 ペグインターフェロン, 少量併用投与法