セッション情報 シンポジウム10(消化器病学会・肝臓学会合同)

C型肝炎治療の新たな展開

タイトル 肝S10-10:

Vitamin D とその代謝産物の抗HCV作用の検討

演者 松村 卓哉(昭和大・消化器内科)
共同演者 加藤 孝宣(国立感染症研究所・ウイルス第2部), 井廻 道夫(昭和大・消化器内科)
抄録 【目的】現在、慢性C型肝炎の治療としてペグインターフェロンとリバビリンの併用療法が行われているが、その効果は十分ではなく副作用の点からも満足できるものとは言えない。そのため新たな治療法の確立が望まれている。最近、慢性C型肝炎の治療においてVitamin D (VD)併用における抗HCV作用の改善が報告され、VD投与における治療の有効性が期待されている。しかし、VDの抗HCV作用機序は明らかではなく、VDは細胞性免疫を抑制するという報告もあり、抗HCV効果としての矛盾点も併せ持つ。本研究の目的はVDとその代謝産物の抗HCV作用とその機序を明らかにすることである。【方法】VDとその代謝産物である1α(OH)VD、25(OH)VD、1,25 (OH)2VDおよび24,25(OH)2VDの抗HCV効果は、HCV-JFH1を用いた感染増殖系(HCVcc)を用いて評価した。そして、その作用機序の解明ためHCV pseudo-particles (HCVpp)系で感染課程を、HCV-subgenomic replicon (HCV-SGR)で複製課程を、またHCVレセプターであるCD81の発現を認めないHuh7-25細胞を用いたシングルサイクルウイルス生成系で感染性ウイルスの粒子生成と放出の過程を評価した。【成績】HCVccを用いた感染実験において、VDとその代謝産物の抗HCV作用を検討した。その結果、培養上清中HCVコア蛋白量の低下は、VDの肝臓での代謝産物である25(OH)VDで観察された。そこで、25(OH)VDの抗HCV作用を詳細に検討した。25(OH)VD は、HCVppの感染(entry step)には影響を与えず、HCV-SGRで複製課程を抑制していることが認められた。さらには、感染性ウイルス粒子生成過程も阻害していることがシングルサイクルウイルス生成系で明らかとなった。一方で、ウイルス粒子の放出には影響を与えていなかった。【結論】VDの肝臓での代謝産物である25(OH)VDは抗HCV作用を持ち、新たな抗HCV薬の候補となり得ることが示された。今後さらに詳細な検討を行っていく予定である。
索引用語 Vitamin D, C型肝炎ウイルス