セッション情報 | シンポジウム10(消化器病学会・肝臓学会合同)C型肝炎治療の新たな展開 |
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タイトル | 肝S10-12:HCV JFH-1キメラ株を用いたNS5A阻害剤の株特異的抗ウイルス活性の評価 |
演者 | 加藤 孝宣(国立感染症研究所・ウイルス第2部) |
共同演者 | 政木 隆博(国立感染症研究所・ウイルス第2部), 脇田 隆字(国立感染症研究所・ウイルス第2部) |
抄録 | 【目的】現在、C型慢性肝炎に対しペグインターフェロンとリバビリンによる治療が行われているが、その治療効果は十分ではなく副作用も認められる。近年、治療効果の向上を目指しHCV蛋白質を標的とした薬剤が開発され、良好な成績が報告されている。特に内服投与が可能なNS5A阻害剤は、培養細胞でのHCV複製を強力に抑制することから注目されている。これらの薬剤の治療効果評価には、培養細胞でのHCV感染増殖系が有用であるが、このシステムで利用できる株は限られており遺伝子型の影響や薬剤耐性変異の評価は難しい。そこで我々は、HCV JFH-1株のNS5A領域を他のHCV株に入れ換えたキメラ株を用い、NS5A阻害剤の株特異的な抗ウイルス活性を評価した。 【方法】HCV JFH-1株のNS5A領域を、H77株(1a型)、Con1株(1b型)、J6CF株(2a型)、MA株(2b型)のNS5Aに入れ換えたキメラ株を作製し、培養細胞内での増殖複製能とNS5A阻害剤(BMS-790052)に対する感受性を評価した。 【成績】作製したキメラ株はすべてHuh7.5.1細胞で増殖複製が可能であった。培養上清中のコア蛋白質量は遺伝子型1のNS5Aを持つキメラ株で低値であり、遺伝子型2のキメラ株では高値であった。また、NS5A阻害剤の投与によりすべてのキメラ株で用量依存的に複製阻害を認めた。しかし、その阻害活性は株により異なり、遺伝子型1のキメラ株では高い感受性を示したが、遺伝子型2のキメラ株では抵抗性であった。 【結論】今回の我々の検討では遺伝子型2のNS5A領域を持つJFH-1キメラ株がNS5A阻害剤に抵抗性を認め、遺伝子型2のHCV株はNS5A阻害剤に感受性が低い可能性が示された。今後、多くの株での感受性の差や薬剤耐性に関わる変異の同定など、さらに詳細な検討が必要と考えられた。 |
索引用語 | 新規治療薬, HCV |