セッション情報 シンポジウム11(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

消化器がんの発育速度と有効な検診間隔

タイトル 内S11-5追2:

内視鏡治療を目指した早期胃癌発見のための適切な検査間隔

演者 出口 久暢(和歌山県立医大・2内科)
共同演者 前北 隆雄(和歌山県立医大・2内科), 井口 幹崇(和歌山県立医大・2内科)
抄録 【目的】内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の普及がすすみ、今後はいかに早い段階で胃癌を発見し内視鏡治療に持ち込むかが大切である。また、内視鏡治療後も異時性多発の問題があり、さらに H.pylori 除菌による発癌予防も背景粘膜の状態に左右されることもあり、慎重なfollow upが必要となる。
【方法】当科でESDを施行した胃腫瘍性病変、553病変に対して、病変の発見6ヵ月以上前の内視鏡写真の見直しを行い、発見時との変化とその期間を調べ、適切なfollow up期間を考察する。
【成績】553病変中、6ヵ月以上前の内視鏡写真が確認できたのは149病変で、その内、胃癌は96例(男性84名、女性12名)、平均観察期間575日。52例は前回検査で異常が指摘できず(平均観察期間667日)、病変出現時の所見は、陥凹21例、隆起20例、発赤9例、びらん2例。前回検査で所見があった症例が44例(平均観察期間465日)。隆起が存在した15例中2例が陥凹性病変に変化。陥凹が存在した7例中、陥凹が強くなった例が2例。その他、びらんや発赤、潰瘍、瘢痕などの例で、生検で悪性所見なくfollowとなった症例であった。IIc病変で、生検でgroup5であったにも関わらず、患者背景によりfollowとなっていた例を2例認めたが(観察期間は222日と502日)、いずれも病変の変化はなくESDで治療可能であった。逆に手術になった例は7例あり、平均観察期間は754日であった。ペプシノゲン法による萎縮の有無での観察期間はPG法陰性群(14例)で589日、陽性群(59例)で560日であった。 H.pylori 除菌後の胃癌発生例は29例あり、平均観察期間は480日であった。
【結論】手術となった群とESDで完治できた群との間での観察期間に有意差はなかった(754日対561日:p=0.378)が、手術例はほぼ2年の平均観察期間であり、その観点から行くと、手術を回避するためには約1年間隔でのfollow upが必要と思われる。また、今回の検討では胃癌による死亡例はなく、2年間隔でも死亡率には影響がないものと思われるが、内視鏡治療を目指した検査間隔は1年間隔が妥当と考える。
索引用語 早期胃癌, 内視鏡検査