セッション情報 シンポジウム11(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

消化器がんの発育速度と有効な検診間隔

タイトル 内S11-8:

大腸上皮性腫瘍の自然史と経過観察に関する検討

演者 鈴木 憲次郎(仙台市医療センター仙台オープン病院・消化器内科)
共同演者 平澤 大(仙台市医療センター仙台オープン病院・消化器内科), 藤田 直孝(仙台市医療センター仙台オープン病院・消化器内科)
抄録 【背景】がん対策基本法に基くがん対策推進基本計画や大腸内視鏡検査の普及により、多くの大腸上皮性腫瘍が発見されている。発見された病変については、主に大きさの観点から経過観察や内視鏡的摘除が行われている。しかし、その自然史は十分解明されておらず、surveillance programについてもコンセンサスは得られていない。【目的】腫瘍径5mm以下の小型の大腸上皮性腫瘍の自然史を検討し、適切なsurveillance programを考察する。【方法】1999.6~2003.5に地域癌検診の免疫学的便潜血陽性で全大腸内視鏡検査(TCS)を施行した症例は2886例であった。このうち腫瘍径5mm以下の単発の上皮性腫瘍126例について、書面によるIC取得のうえ病変近傍に点墨を打ちメジャー鉗子で腫瘍径を測定後、prospectiveに経過観察を行った。このうち発見後2年以降に当科で摘除もしくは3年以上経過観察を行った66例を対象とし、腫瘍径の変化、臨床経過に関して検討した。【結果】対象の平均年齢は60.1±9.3歳、男女比36:30、平均観察期間5.4±1.6年であった。30例で腫瘍径の増大が見られ、初回の平均腫瘍径は3.6±0.9 mm、最終平均腫瘍径は4.4±1.5 mmであった。増大なしまたは1 mm以下の増大が52例(79%)と大多数であった。一方、4 mm以上の増大は4例(6%、range : 4-6 mm )みられ、観察期間は各々2、3、4、8年(平均4.3年)であった。著明な増大、もしくは患者の摘除希望が強かった10例に内視鏡摘除を行い癌は1例もなかった。経過観察中に新たに他の上皮性腫瘍が35例(53%)で60病変認められた。発見時の平均腫瘍径は3.2 mm、6mm以上の病変は8病変で、6病変で摘除が行われ、全例腺腫であった。【まとめ】平均観察期間5.4年で0.8mm、1年当たり0.15mmの増大が見られた。4mm以上増大した病変は6%存在したが、癌はみられなかった。偽陰性もしくは新病変が53%に見られたが、癌はなかった。【結語】少数例の検討であり適切なサーベイランス間隔に言及はできないが、単発で5mm以下の病変に対しては、2年以上の間隔で経過を観察できる可能性があると考えられた。
索引用語 大腸ポリープ, surveillance program