セッション情報 シンポジウム11(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

消化器がんの発育速度と有効な検診間隔

タイトル 消S11-9:

全大腸内視鏡検査による長期観察症例での累積大腸腫瘍発生に関する検討

演者 川久保 実和(自衛隊中央病院・内科)
共同演者 徳永 徹二(自衛隊中央病院・内科), 箱崎 幸也(自衛隊中央病院・内科)
抄録 【目的】大腸腫瘍(腺腫・癌)既往歴例ではclean colon後も、従来の多くの報告では大腸腫瘍を発生しやすいと報告されている。今回全大腸内視鏡検査(total colonoscopy;TCS)で長期観察し得た症例を5年以上と10年以上経過観察例に分類し、初回所見で腺腫群、癌群、正常群に分類し累積腫瘍発生率の検討を行った。【方法】対象は当院で1985年2月~2011年1月の間にTCSを、1年以上の間隔を開け1回以上行い、5年・10年以上経過観察出来た40歳以上の1506症例・517症例とした。炎症性腸疾患・カルチノイド症例は除外した。初回TCS時、腺腫群、癌腫群、正常群に分類し、初回治療後の経過TCS施行で腫瘍性病変が指摘できない時点を観察開始点とし、経過観察中にTCSで治療必要かつ病理組織学的に腫瘍性病変と診断された時点を打ち切りとし、累積腫瘍発生率を検討した。【結果】平均観察期間は5年以上経過観察例では10年、10年以上観察例では12年であった。5年以上観察症例の初回TCSの腺腫群(490例)、正常群(904例)との比較検討では、腺腫群で有意な腫瘍発生を認めたが(Kaplan-Meier method, p=0.0055)。しかし、10年以上経過観察症例では、両群間(腺腫群169例、正常群308例)では腫瘍発生に差は認められなかった(p=0.1954)。癌腫群は正常群に比し5年・10年以上観察ともに腫瘍発生は有意に高率であった(p=0.0103、p=0.0248)。【結論】5年以上経過観察例での検討では、腺腫群で正常群に比し有意に腫瘍発生が高率であったが、10年以上観察例では差は認められなかった。10年以上の長期観察では、大腸腺腫症例でも正常群と同様の大腸腫瘍発生率と考えられた。この相違は、腺腫群では初回TCSでの見逃しや注意深い観察などが推測される。
索引用語 大腸腫瘍, 累積発生率