セッション情報 シンポジウム11(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

消化器がんの発育速度と有効な検診間隔

タイトル 検S11-11:

膵臓癌の早期発見のために適正な検診間隔を検討するための無作為割り付けII相試験

演者 井岡 達也(大阪府立成人病センター・検診部)
共同演者 田中 幸子(大阪府立成人病センター・検診部), 高倉 玲奈(大阪府立成人病センター・検診部)
抄録 はじめに 膵癌は難治癌だが、StageI/IIの早期癌では5年累積生存率も50%以上の比較的良好な成績である。しかし、早期に診断される症例が非常に少なく80%以上の症例が進行したStageIVで診断されている。高危険群を対象とした厳重な経過観察が必要と考えられているが、今回、我々は適正な検診間隔を検証するための無作為割り付け試験を開始した。 まず、膵癌高危険群の設定をおこなった。1999年より2002年の4年間に膵管拡張やのう胞などの異常所見を認めた1,058例について定期的に、超音波検査および腫瘍マーカーの測定を行った。平均観察期間は75.5±17.3カ月で、2007年末までの経過観察期間中に12例に膵癌が発症し、1,046例には発症しなかった。両群の登録時の所見を比較検討したところ、主膵管の軽度拡張と膵嚢胞の両所見を有する群からは、いずれも認めない群の27.5倍(p=0.002)の高頻度で膵癌が発症し、5年累積膵癌罹患率は5.62%(95%危険区域:0.37%-13.03%)、年率にすると人口10万人当たり、1,124に人となった。2002年における同年齢層(60-65歳)の日本人の罹患率である、人口10万人当たり37.5人と比べると約30倍という著しい高い罹患率で、我々は、膵癌高危険群を同定することに成功した。対象と方法 本研究は当センター倫理審査委員会の承認を得て行った。膵のう胞と主膵管拡張の双方を認めた被検者を対象にして、文書同意のうえで、年齢(65歳)と性別(男女)を割り付け因子にして、3か月ごとの超音波検査と6か月ごとの検査に無作為に割り付けた。両群について、年1回の造影腹部検査を追加した。主評価項目は、切除可能な膵癌の診断割合に設定した。成績 2010年6月28日から118人に説明し、101人に同意を得て割り付けを行った(同意率86%)。膵癌は難治癌ではあるが、早期発見すれば治癒可能な癌である。早期診断のために、適正な検診間隔を確認することは今後の膵癌対策には必須の条件と考えている。
索引用語 膵臓癌, 検診間隔