セッション情報 シンポジウム12(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会合同)

消化器疾患と免疫

タイトル 肝S12-1:

原発性胆汁性肝硬変(PBC)における病因病態の解析

演者 下田 慎治(九州大・病態修復内科)
共同演者 中村 稔(国立長崎医療センター・臨床研究センター), 石橋 大海(国立長崎医療センター・臨床研究センター)
抄録 【目的】PBCは肝内細胆管レベルでの慢性非化膿性破壊性胆管炎を特徴とした臓器特異的自己免疫疾患である。我々はこの慢性非化膿性破壊性胆管炎を試験管内で再構築する系の樹立を試みた。【方法】非代償性肝硬変移植時の摘出肝よりコラゲナーゼ処理後密度勾配法で単核球分画を採取し、壁付着細胞から抗上皮抗体陽性細胞をイムノビーズで選択し胆管上皮細胞とした。非壁付着細胞を肝臓浸潤単核球とした。最初に胆管上皮細胞の産生するケモカインをプロテインアレイで網羅的に検索し、個々のケモカインの産生量はELISAで測定した。次に肝臓浸潤単核球と自己胆管上皮細胞の接着の程度を測定した。最後に肝臓浸潤単核球による自己胆管上皮細胞の破壊を検討した。各々の検討項目で自然免疫からの刺激も追加して、PBC症例と対照疾患群で比較検討を行った。【成績】胆管上皮細胞は慢性炎症に関連したケモカインCXCL1、CXCL5、CXCL6、CXCL8を産生した。Toll like receptor (TLR)3リガンドを加えた場合、獲得免疫環境にシフトさせるケモカインCCL3、CCL4、CCL5、CXCL10を産生した。細胞接着の検討では胆管上皮細胞をTLR4リガンドで刺激した場合、肝臓浸潤単核球の自己胆管上皮細胞への接着能が亢進した。最後に肝臓浸潤単核球をTLR3リガンド、TLR4リガンドで刺激すると自己胆管上皮細胞を傷害することが明らかとなった。胆管上皮細胞のみを観察する系ではPBCと非PBCに有意な差を認めなかったが、胆管上皮細胞と肝臓浸潤単核球を同時に観察する系ではPBCで有意に細胞接着能や細胞傷害活性が亢進していた。【結論】TLR3リガンド、TLR4リガンド刺激が有効である環境では胆管上皮細胞は自己免疫を発症しやすくなり、単核球が胆管上皮細胞との接着能を亢進させ、最終的に胆管上皮細胞を破壊させることが明らかとなった。またこの現象は胆管上皮細胞ではなく単核球が主体であった。我々の樹立した系はPBCの病因病態を模倣しており、この系の制御がPBCの新たな治療法開発の基盤になると考えられた。
索引用語 原発性胆汁性肝硬変, Toll like receptor