セッション情報 シンポジウム12(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会合同)

消化器疾患と免疫

タイトル 肝S12-2:

慢性C型肝炎患者における自己免疫性疾患発生の新規メカニズム

演者 近藤 泰輝(東北大病院・消化器内科)
共同演者 上野 義之(東北大病院・消化器内科), 下瀬川 徹(東北大病院・消化器内科)
抄録 【背景】 我々はリンパ指向性HCVがT細胞分化に関わる可能性について検討を続けており【Virol.2007, JID2009, JG2011】 、Th17との関わりを検討することは急務である。【目的】C型肝炎ウイルスが自己免疫疾患と関わりの深いTh17にどのような影響を及ぼすかを検討する。【方法】当院受診で肝生検を実施した190例のCHC患者の自己抗体免疫疾患合併頻度について検討した。CHC患者血清を用いて、Th17分化に影響を与えるTGF-β,IL6,IL21についてELISAを用いて定量した。In-vitroのSB-HCV複製系を用いて、Humanのプライマリーnaive T細胞への感染実験を行った。Negative ControlとしてUV-irradiated-SB-HCV, JFH-1 strainを用いた。Naive T細胞の分離にはMACS systemを用い、各種培養条件下(IL6+TGF-β, IL6, IL2)で培養を施行してIFN-γ, Il10, Il17A産生細胞頻度をFACSにて解析し、またT-bet,Gata-3, Rorγtを定量した。HCV-individual protein (HCV-E1, E2, Core, NS2, NS3,NS4A, NS5A, NS5B)発現プラスミドをNucleofectorにてヒトプライマリーT細胞に導入を行いTh1抑制、Th17分化誘導の責任蛋白の同定を試みた。長期に蛋白発現をさせる目的でHCV-Core発現レンチウイルスを作成し感染実験を施行した。【結果】自己抗体陽性慢性C型肝炎患者においてIL6, TGF-βの産生が亢進しており、Th17分化条件にあると考えられた。SB-HCV感染naive T細胞ではIL2刺激下での分化増殖能の有意な低下が認められた。SB-HCV感染naive T細胞において、IL2刺激下ではIFN-γ産生細胞の有意な低下を認め、IL6+TGF-β刺激下ではIL17A産生細胞の有意な増加を認めた。HCV-CoreとNS5A導入T細胞においてIFN-γ産生の有意な抑制が認められた。HCV-Core導入T細胞においてTh17細胞の有意な増加が確認された。【結論】リンパ指向性HCVはB細胞刺激によるImmunoglobulinのhyper mutationを引き起こすこと【JV2008】 以外にもTh17分化を増強することにより自己免疫疾患発症に関与している可能性が考えられた。
索引用語 Th17, HCV