セッション情報 シンポジウム12(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会合同)

消化器疾患と免疫

タイトル 肝S12-3:

NASH進展における自然免疫の役割

演者 三浦 光一(秋田大・消化器内科)
共同演者 石 亦宏(University of California San Diego), 大西 洋英(秋田大・消化器内科)
抄録 (目的) NASH患者では腸内細菌叢の変化により、腸内細菌産物が門脈に多量に流入すると報告されている。肝臓はこれら腸内細菌産物を排除するため、自然免疫が活性化されるが、その慢性的な活性化はむしろ肝障害を引き起こすとされる。Toll-like receptor(TLR)はこれら細菌産物を認識する自然免疫機構の一つであり、我々はTLRとそのアダプター分子の網羅的解析を行い、NASH進展における役割を検討した。(方法) 8週齢雄性WTマウス、TLR2、TLR4、TLR9、TLRのアダプター分子MyD88の各KOマウス、TLRの下流分子の一つであるIL-1βについてはIL-1RKOマウスを用いて、NASH病態を評価した。またWT マウスよりKupffer細胞、肝細胞、星細胞を分離し、in vitroにおいて各TLRリガンドおよびIL-1βによる刺激を行い、vivoとのデータと比較した。(成績) WTマウスでのコリン欠乏食(NASH誘導食)22週間投与では、静脈血中のLPS (TLR4リガンド)や細菌由来DNA(TLR9リガンド)は増加した。またWTマウスではALT上昇に加え、肝臓では著明な脂肪肝、炎症細胞浸潤および肝線維化が誘導され、典型的なNASHが誘導された。一方、TLR2、TLR4、TLR9KOマウスでは血清ALT、炎症細胞浸潤、肝線維化は抑制された。MyD88のKOマウスでは脂肪肝、炎症細胞浸潤および肝線維化が抑制され、NASHが軽減した。TLR-MyD88の下流分子のひとつであるIL-1βがMyD88 KOで発現が抑制されていた。そこでIL-1R KOマウスにコリン欠乏食を22週投与したところ、NASHの軽減が認められた。それらTLRを発現するKupffer細胞をWTマウスより分離し、各TLRリガンドで刺激したところ、IL-1β発現を増加させた。このIL-1βは肝細胞に脂肪蓄積作用を認めた。またIL-1βは正常肝細胞では障害性を示さなかったが、脂肪蓄積肝細胞では肝細胞死を誘導した。一方、肝星細胞にはTIMP-1やPAI-1といった線維化マーカーの発現を増加させた。(結語) NASH発症や進展には自然免疫が関与し、肝臓での慢性的なTLRシグナル活性化は炎症性サイトカインを増加させ、NASHを悪化させている。
索引用語 NASH, 自然免疫