セッション情報 シンポジウム12(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会合同)

消化器疾患と免疫

タイトル 消S12-6:

消化器癌に対する免疫療法の検討

演者 江口 潤一(昭和大・消化器内科)
共同演者 広石 和正(昭和大・消化器内科), 井廻 道夫(昭和大・消化器内科)
抄録 【目的】免疫療法は副作用が軽度で効果的な治療として期待されているが、消化器癌は低免疫原性であり、強力に免疫を誘導する必要がある。我々は消化器癌に対するサイトカイン療法、樹状細胞療法、抗体療法の併用を行い、その臨床応用について検討した。【方法】マウス大腸癌細胞株MC38、肝細胞癌細胞株BNLの皮下腫瘍モデルを用いた。まず腫瘍細胞野生株にIFN-α、IL-4、IL-12遺伝子を導入し、サイトカイン産生腫瘍細胞株を作成した。マウス骨髄細胞より樹状細胞を誘導し、樹状細胞による治療を検討した。腫瘍野生株を予め接種し腫瘤を形成したマウスに、各サイトカイン遺伝子導入株や樹状細胞を投与した後、野生株腫瘤の大きさを測定した。また、複数のサイトカインの併用やサイトカインと樹状細胞の併用、そして、生体の免疫を増強するCpGや抗PD-1抗体を皮下接種した免疫療法についての検討も行った。野生株腫瘤内に浸潤した免疫細胞の免疫組織染色やフローサイトメトリー、また上記治療で免疫したマウスの脾細胞からCTLの誘導を試み、各々の治療についての作用機序を比較検討した。【成績】IFN-α、IL-4、IL-12のいずれもが抗腫瘍効果を示したが、各サイトカイン単独治療と比較し、複数のサイトカインの併用により、より高い効果が認められた。IFN-αやIL-4に樹状細胞療法やCpG、抗PD-1抗体を組み合わせることもさらに有効であり、免疫したマウスから腫瘍特異的CTLが効果的に誘導され、長期間持続する腫瘍特異的免疫応答が維持されていた。サイトカインが示す抗腫瘍効果の作用機序はそれぞれ異なっており、併用すると抗腫瘍効果が高まる理由と考えられた。【結論】サイトカイン療法、細胞療法、抗体療法などの複数の治療を組み合わせる免疫療法はマウス消化器癌に対して高い抗腫瘍効果を示すことが認められた。今後、免疫療法の臨床への応用には、さらに有効な治療法の開発が必要で、どのサイトカインと樹状細胞、免疫誘導アジュバントの併用が最も効果的かを検討することが重要である。
索引用語 免疫療法, 消化器癌