セッション情報 シンポジウム12(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会合同)

消化器疾患と免疫

タイトル 消S12-7:

慢性腸炎においてTR細胞によって制御されるTh17→Th17/Th1→alternative Th1細胞経路の発見

演者 金井 隆典(慶應義塾大・消化器内科)
共同演者 筋野 智久(慶應義塾大・消化器内科), 日比 紀文(慶應義塾大・消化器内科)
抄録 【目的】炎症性腸疾患(IBD)に限らずさまざまな慢性免疫疾患においてTh1とTh17細胞が増加することが知られており、免疫病態にTh1、Th17細胞がともに病因的に関与し、かつ、制御性T(TR)細胞は直接的にTh1とTh17細胞を抑制すると考えられてきた。今回、IBD類似慢性大腸炎モデルを用い、Th17、Th17/Th1、Th1細胞の発達経路、さらにはTR細胞との相互作用を追求した。
【方法】RORγt GFPレポーターマウス由来のLy5.2+ CD4+CD45RBhigh 及びLy5.1+ TRをRAG2KOマウスに移入した(単独移入群とTR共移入群)。さらに、単独移入群大腸LP CD4+細胞からGFP+、GFP-細胞を分離し、RAG2KOマウスに共移入した(G+、G-単独移入群)。各マウスは移入6週後、移入細胞のIFN-γ/IL-17A二重染色をFACSにて解析した。
【結果】単独移入群では腸炎を発症し、TR共移入群では腸炎を抑制した。単独移入群ではTR共移入群に比し、IL-17A-IFN-γ+ Th1細胞の増加を認め、驚くべきことにTR共移入群ではGFP+ IL-17A+IFN-γ- (Th17)とGFP+ IL-17A+IFN-γ+(Th17/Th1)細胞比率の著明な増加を認めた。また、TR共移入群ではTh1マスター遺伝子T-betの発現を認めず、単独移入群ではGFP+細胞(Th17とTh17/Th1)においてもT-betの発現を認めた。さらにG+、G-単独移入群とも腸炎を発症し、G+単独移入群でRORγt-T-bet+ Th1細胞 (alternative Th1)の出現を認めた。
【結語】慢性大腸炎のTh発達経路において、Th17→Th17/Th1→alternative Th1経路を発見し、TR細胞がTh17/Th1→alternative Th1細胞間を阻害していることを明らかとし、慢性大腸炎免疫病態の複雑性の一端を解明した。(共同研究者;小野祐一、三上洋平、松岡義克、久松理一、Dan Littman)
索引用語 Th17とTh1, RORγt