セッション情報 シンポジウム12(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会合同)

消化器疾患と免疫

タイトル 消S12-9:

制御性B細胞による腸管免疫抑制機構とその破綻による腸炎発症機序の解明
-クローン病モデルマウスの病態解析からの知見とその応用-

演者 岡 明彦(島根大附属病院・消化器内科)
共同演者 石原 俊治(島根大附属病院・消化器内科), 木下 芳一(島根大附属病院・消化器内科)
抄録 【背景】
炎症を負に制御する新規のB細胞サブセットである制御性B細胞の機能は明らかにされていない.本研究の目的は,腸管免疫応答におけるIL-10産生制御性B細胞の機能解析を行い,その破綻による腸炎発症のメカニズムを明らかにすることである.
【方法と結果】
1. クローン病マウスの腸管B細胞におけるIL-10産生の低下
クローン病モデルとしてSAMP1/Yit,コントロールとしてAKR/Nを用いた.腸間膜リンパ節からB細胞を分離し,非メチル化CpG-DNA刺激時のIL-10産生量をEIAで測定した.SAMPの腸管B細胞では,IL-10産生量が有意に低下していた.
2.クローン病患者の末梢血B細胞におけるIL-10産生の低下
クローン病18人,潰瘍性大腸炎23人,健常人26人の末梢血からB細胞を分離し,CpG-DNA刺激時のIL-10産生量を測定した.患者の臨床的背景を含めて統計解析を行うと,クローン病罹患とIL-10産生量の低下が有意に相関した.
3. CD4+T細胞移入SCIDマウスの腸炎をBregは抑制する
マウスおよびヒトの解析により,IL-10を産生する制御性B細胞としてCD19highCD1dhighB細胞(Breg)を同定した.SAMPのCD4+T細胞をSCIDに移入し,慢性腸炎モデルを作製した.本モデルにBreg分画とnon-Breg分画を各々移入し腸炎発症におけるBregの機能を解析した.本検討では,Bregの移入によって有意に腸炎が抑制されたことから,BregはCD4+T細胞に依存した腸炎を抑制することが明らかとなった.さらに,腸管組織へ浸潤したCD4+T細胞のサブセット解析と,CD4+T細胞とBregの共培養実験によってBregがTh1依存性の免疫を抑制することが示された.
【結語】
制御性B細胞の機能異常がクローン病の病態増悪に関与している可能性が示唆された.
索引用語 クローン病, B細胞