セッション情報 シンポジウム12(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会合同)

消化器疾患と免疫

タイトル 消S12-10:

IL10KO由来T細胞移入腸炎モデルにおける食餌抗原反応性T細胞の関与

演者 池上 由佳(味の素製薬(株)・創薬研究センター・探索研究所)
共同演者 鵜尾 道秀(味の素製薬(株)・創薬研究センター・探索研究所), 森 妹子(味の素製薬(株)・創薬研究センター・探索研究所)
抄録 【目的】クローン病(CD)の病態形成に食餌要因が大きく関与することが知られているが、その詳細な機序は十分に解明されていない。我々は多種の食餌品目に対する血清IgGがCD患者特異的に高値であること、IL10KOマウスにおいてIgG産生を認める食餌成分(脱脂大豆・小麦・コーン)の除去によりIL10KO移入モデルの腸炎が抑制される(大腸重量:354±16 vs 586±13mg; p<0.001)ことから、食餌成分が抗原として腸炎の増悪化に影響を与える可能性を示してきた。今回この増悪化メカニズムを明らかにするため、抗原の同定および食餌由来の抗原に対しT細胞がTh1型またはTh17型の反応を惹起するかについて検討を行った。【方法】IL10KO移入モデルにおいて腸炎の発症程度を増悪させる脱脂大豆の成分に対し、IL10KOマウスの血清IgGが反応するバンドをPeptide Mass Fingerprint解析し、抗原蛋白質を同定した。本抗原蛋白質を提示させたマウス骨髄由来樹状細胞とIL10 KO移入マウスまたはBALB/c(コントロール)の腸管膜リンパ節より単離したCD4 + T細胞との共培養により、抗原蛋白質によるT細胞反応性をIFN-γ、IL-17の産生量で評価した。【成績】同定された抗原は、大豆の主要な構成蛋白質であった。本蛋白質に対するT細胞反応性を検討した結果、非抗原蛋白質(カゼイン)と比べIL10KO移入マウス由来T細胞からのIFNγ産生(1075±204 vs 0±173 pg/ml)、IL-17産生(3993±709 vs 59±203 pg/ml)が有意に高値を示した。このサイトカイン産生はMHC classII抗体にて抑制され、またBALB/c 由来T細胞からのサイトカイン産生は抗原蛋白質、非抗原蛋白質ともに検出限界以下であった。【結論】IL10KO移入モデルにおいて、食餌由来の抗原蛋白質がTh1型およびTh17型の炎症を惹起し、腸炎増悪に関与する事が示唆された。抗原蛋白質を含まない成分栄養療法の炎症鎮静化の機序の一つと考えられる。
索引用語 クローン病, 食餌抗原