セッション情報 シンポジウム12(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会合同)

消化器疾患と免疫

タイトル 消S12-12:

Human Neutrophil Peptide-1はTリンパ球非依存的にDSS腸炎を悪化させる

演者 橋元 慎一(鹿児島大大学院・消化器疾患・生活習慣病学)
共同演者 宇都 浩文(鹿児島大大学院・消化器疾患・生活習慣病学), 坪内 博仁(鹿児島大大学院・消化器疾患・生活習慣病学)
抄録 【背景・目的】Human Neutrophil Peptide(HNP)は炎症に伴い好中球のアズール顆粒から分泌される。我々はプロテオーム解析によりHNP1-3が潰瘍性大腸炎(UC)患者血中に増加することを見出し、血漿HNP1-3がUCの診断や治療効果予測マーカーとして有用である可能性を報告している。しかし、HNP1-3とUCの病態との関連は明らかにされていない。本研究では、HNP-1が大腸炎モデルマウスに及ぼす作用及びメカニズムについて検討した。【方法】8週齢のBALB/cマウスもしくはSCIDマウスにそれぞれ4%もしくは3%のDSSを7日間自由飲水で投与し、大腸炎を誘導した。DSS投与4日目から6日目までHNP-1(100μg/body/day)もしくはPBSを連日腹腔内投与した。DSS投与7日後にDAIスコア、病理スコア、およびサイトカイン分泌を評価した。 【結果】BALB/cマウスにおいてHNP-1投与群ではPBS投与群と比較して、有意に体重は減少し、腸管長径は短縮し、DAIスコア及び病理スコアは上昇した。腸管培養上清中のIFNγとTNFα濃度はHNP-1投与群で有意に上昇し、IL-1βも高い傾向を示した。また、SCIDマウスでは、HNP-1投与群でDSS投与による大腸粘膜障害は促進し、腸管培養上清中のIL-1βは有意に高値であった。さらに、F4/80免疫染色による評価では、BALB/c、SCIDマウスいずれもHNP-1投与群ではPBS投与群と比較して腸粘膜でのマクロファージ数が増加していた。【結論】HNP-1は炎症性サイトカインやマクロファージの増加を介してDSS腸炎の粘膜障害を増悪させると考えられた。UC患者ではHNP1-3がT細胞非依存的に腸炎を悪化させる機序も存在する可能性が示唆された。
索引用語 Human Neutrophil Peptide, DSS