セッション情報 シンポジウム13(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

炎症と消化器癌

タイトル 消S13-1:

胃炎発癌における STAT3/REG シグナルの役割

演者 福井 広一(兵庫医大・内科(上部消化管科))
共同演者 藤盛 孝博(獨協医大・病理学(人体分子)), 三輪 洋人(兵庫医大・内科(上部消化管科))
抄録 【背景・目的】 H. pylori 感染胃炎から胃癌発生に至るメカニズムは明らかでない.近年,H. pylori 感染胃炎や胃癌組織において強発現する遺伝子が網羅的に検索された結果,Regenerating gene (REG) 遺伝子が同定され,さらに,STAT3 を過剰発現させた胃炎発癌マウスでも REG の過剰発現が認められた.そこで本研究では,STAT3 による REG 発現の制御機構と REG 蛋白の抗アポトーシス作用機序を検討した.【方法】 胃癌組織における REG および リン酸化 STAT3 (p-STAT3) の発現を免疫組織学的に検討した.IL-6 刺激および STAT3 siRNA 処理によって胃癌細胞株 (AGS, MKN74) の STAT3 リン酸化を促進または抑制し,REG の発現を Western blot で検討した.REG promoter における STAT3 結合部位を deletion assay で同定し,STAT3 の結合を EMSA 法で確認した.REG 強制発現胃癌細胞を抗 REG 中和抗体および STAT3 siRNA で処理し,STAT3 に誘導された REG の抗アポトーシス作用を TUNEL 法および caspase 活性で評価した.胃癌細胞を REG 蛋白で刺激し,アポトーシス関連分子の発現変化を Western blot で検討した.【結果】 REG および p-STAT3 発現は,それぞれ 42%,53% の胃癌組織に陽性であり,その発現に相関を認めた.IL-6 刺激された胃癌細胞では p-STAT3 発現,REG promoter 活性,REG 発現が増強し,それらの増強はSTAT3 siRNA 処理によって抑制された.REG promoter における IL-6/STAT3 シグナル責任部位は -142~ -134 の部位と同定され,同部への STAT3 結合が確認された.STAT3 siRNA 処理によって胃癌細胞の TUNEL 陽性細胞数および caspase 3 活性は増強したが,この STAT3 の抗アポトーシス効果は REG 蛋白を介していた.REG の下流では,リン酸化 Akt,および Bcl-xL 発現の増強が認められた.【結論】 STAT3/REG シグナルによる抗アポトーシス作用が胃炎からの発癌に役割を果す可能性が示唆された.
索引用語 REG, 胃癌