セッション情報 |
シンポジウム13(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)
炎症と消化器癌
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タイトル |
消S13-3:H.pylori感染からの胃癌発生過程により惹起される遺伝子コピー数異常の生成機構
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演者 |
清水 孝洋(京都大大学院・消化器内科学) |
共同演者 |
丸澤 宏之(京都大大学院・消化器内科学), 千葉 勉(京都大大学院・消化器内科学) |
抄録 |
【目的】H.pylori感染による慢性胃炎を背景として胃癌が高頻度に発生することがよく知られているが、胃癌組織だけでなく発癌前の胃炎組織にも、様々な発癌関連遺伝子に遺伝子異常が蓄積していることが分かっている。我々は、胃上皮細胞に遺伝子変異が生じるメカニズムの1つとして、H.pylori感染によって生じた慢性炎症により、DNAへの変異導入活性を有するAID(activation-induced cytidine deaminase)が胃上皮細胞に発現誘導されることが重要であることを明らかにしてきた。本研究では、遺伝子変異とともに癌組織で高頻度に認められる染色体レベルの異常が胃癌の発生に果たす役割と、その生成機構を明らかにすることを目的とした。【方法】1.AIDを発現させた胃上皮細胞株に生じたゲノム異常を網羅的なCGHアレイ解析を用いて解析した。2.野生型マウス及びAIDノックアウトマウスにH.pyloriを経口感染させ、各々の胃粘膜に生じたゲノム異常を比較解析した。3.H.pylori陽性の胃癌患者28人の胃癌及び非癌部胃粘膜について、遺伝子コピー数の変化を検討した。【成績】1.ヒト胃上皮細胞では、AID発現により全染色体にわたり様々な遺伝子コピー数の変化が生じていた。その中でも、癌抑制遺伝子CDKN2A及びCDKN2Bに高頻度にコピー数減少及び点突然変異が生じていた。2.H.pyloriを経口感染させた野生型マウスの胃粘膜にも同様に、Cdkn2b-Cdkn2a領域のコピー数減少が見られたが、H.pyloriを経口感染させたAIDノックアウトマウスの胃粘膜にはそのような変化は認めなかった。3.ヒト臨床検体において、非癌部胃粘膜と比較して胃癌組織に高頻度にCDKN2A及びCDKN2Bのコピー数減少を認めることが分かった。【結論】H.pylori感染による慢性胃炎粘膜においては、胃上皮細胞にAIDが発現誘導されることにより、癌抑制遺伝子の遺伝子変異のみならず遺伝子コピー数異常も生じることが、胃発癌に重要な役割を果たしている可能性が示された。 |
索引用語 |
H.pylori, AID |