セッション情報 シンポジウム13(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

炎症と消化器癌

タイトル 消S13-6:

MFG-8の消化管炎症および炎症発癌への関与-ノックアウトマウスを用いた解析-

演者 楠 龍策(島根大・2内科)
共同演者 石原 俊治(島根大・2内科), 木下 芳一(島根大・2内科)
抄録 【目的】Milk fat globule-EGF-8 (MFG-E8)は、生体内でアポトーシス細胞とマクロファージを架橋し貪食を促進する蛋白質である。我々はこれまでに、腸管の急性炎症時にはMFG-E8の発現が低下し、精製MFG-E8蛋白の投与によって炎症が改善することを報告した。一方、腸管の慢性腸炎時にはMFG-E8の発現が亢進し、上皮の増殖や再生に関わる知見も得ている。今回は、MFG-E8ノックアウト(KO)マウスを用いて急性大腸炎モデルおよび炎症発癌モデルを作成し、MFG-E8の機能解析をおこなった。【方法】(1)急性大腸炎モデル:野生型(C57BL/6)マウスとMFG-E8-KOマウスに2%DSSを1週間自由飲水させ急性大腸炎を作成し、体重変化、組織学的炎症、炎症性メディエーター(Real-time PCR, EIA)を測定し比較した。(2)Colitic cancerモデル:野生型とKOマウスに、アゾキシメタン(AOM)を腹腔内投与後に2.5%DSSの5日間投与を3サイクルおこない、形成された腫瘍の個数と大きさを評価した。【結果】(1)DSS急性大腸炎モデルでは、KOマウスの方が体重減少、組織学的炎症、炎症性メディエーター上昇が高度であり、野生型マウスよりも有意に強い急性大腸炎を認めた。(2)炎症発癌モデルでは、KOマウスの腫瘍の個数はおよび腫瘍径はいずれも野生型マウスよりも有意に低値であった。【考察】(1)KOマウスを用いた急性大腸炎モデルの実験から、MFG-E8は急性炎症時に防御的に働くことが明らかとなり、精製MFG-E8蛋白が急性腸炎を改善させた過去の報告を支持する結果が得られた。(2)炎症発癌モデルでは、KOマウスにおいて腫瘍の個数、大きさともに減少する結果となった。急性炎症時と異なり、慢性腸炎時にはMFG-E8の発現が亢進することから、MFG-E8が上皮の生存や増殖を促進させ腫瘍発生に関与する可能性が示唆された。
索引用語 MFG-E8, 炎症発癌