セッション情報 | シンポジウム13(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)炎症と消化器癌 |
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タイトル | 消S13-8:持続的な肝細胞アポトーシスは肝発癌を誘導する |
演者 | 疋田 隼人(大阪大大学院・消化器内科学) |
共同演者 | 巽 智秀(大阪大大学院・消化器内科学), 竹原 徹郎(大阪大大学院・消化器内科学) |
抄録 | 【背景/目的】ウイルス性肝炎や脂肪性肝炎では肝細胞のアポトーシスが多数認められるが、持続的な肝細胞アポトーシスが肝発癌に与える影響を検討することを目的とした。 【方法】我々はすに肝細胞特異的Bcl-xL KOマウスやMcl-1 KOマウスでは400 - 600 (IU/l)程度のALTの上昇を伴った持続的な肝細胞アポトーシスを認め、肝線維化も促進することを報告してきた(Takehara T, et al. Gastroenterology 2004, Hikita H, et al Hepatology 2009)。また、この持続的肝細胞アポトーシスはアポトーシス促進蛋白質の欠損で改善することも報告してきた(Hikita H, et al Hepatology 2009)。そこで、これらのマウスを長期飼育することによる肝発癌を検討した。 【成績】1.5 - 2年飼育することにより、Bcl-xL KOマウスは83% (5/6)に肝腫瘍の形成を認めたが、コントロールマウスでは認めなかった (0/4)。同様にMcl-1 KOマウスは100% (16/16)に肝腫瘍の形成を認めたが、コントロールマウスはではわずか4% (1/23)に認めるのみであった。また1 - 1.5年飼育では、Mcl-1 KOマウスは67% (8/12)に肝腫瘍の形成を認めたが、コントロールマウスでは認めなかった (0/13)。これらの肝腫瘍は組織学的には中~高分化の肝細胞癌であり、AFPやグリピカン3の上昇も認めた。また、Bcl-xL KOマウスの腫瘍部ではBcl-xLの欠損は保たれていたが、Mcl-1の著明な発現増強を認め、逆にMcl-1 KOマウスの腫瘍部ではMcl-1の欠損は保たれていたが、Bcl-xLの著明な発現増強を認めた。Mcl-1 KOマウスの肝細胞アポトーシスは、アポトーシス促進蛋白質であるBidもしくはBakを欠損させるとALTはそれぞれ200 - 300 (IU/l)、100 - 200 (IU/l)と有意に抑制された。これらのマウスを1 - 1.5年飼育した肝腫瘍の形成率はそれぞれ33% (3/9)、22% (2/9)と、Mcl-1 KOマウスの腫瘍形成率に比し抑制された。 【結論】肝細胞の持続的なアポトーシスは肝発癌を誘発する。 |
索引用語 | アポトーシス, 発癌 |