セッション情報 シンポジウム12(消化吸収学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

食欲・消化吸収をめぐる生理活性物質の新展開

タイトル 吸S12-4:

大腸粘膜からのタキキニンNK2受容体作動性セロトニン放出におけるpeptide YYの役割

演者 児嶋 修一(獨協医大・薬理学)
共同演者 安西 尚彦(獨協医大・薬理学)
抄録 【背景・目的】大腸粘膜エンテロクロマフィン(EC)細胞で合成・放出されるセロトニン(5-HT)は、大腸運動・分泌、悪心・嘔吐、下痢・腹痛の発症に影響する重要な伝達物質である。しかしながら、EC細胞からの5-HT放出調節機構の正確なメカニズムはまだ明らかにされていない。一方、大腸粘膜L細胞で合成・放出されるpeptide YY(PYY)は、生理的な満腹ホルモンとして作用することが示されているが、EC細胞からの5-HT放出に及ぼすPYYの影響についてはほとんど知られていない。これまでに我々はモルモット摘出大腸粘膜標本を用いて、タキキニンNK2受容体刺激薬であるβAla-NKAが大腸粘膜に分布するNK2受容体の刺激を介してEC細胞からの5-HT放出を増強することを明らかにしてきた。今回、この大腸粘膜標本からのβAla-NKA誘発5-HT放出に及ぼす内因性PYYの影響について生化学的・薬理学的手法を用いて検討したので報告する。【方法】常法に従って、モルモット摘出大腸粘膜標本を作製し、栄養液を含むオルガンバス内に懸垂した後、栄養液中に流出するPYY/5-HTをそれぞれ酵素抗体法、HPLC/電気化学検出器を用いて測定した。【結果】βAla-NKAは、大腸粘膜標本からのテトロドトキシン(TTX)抵抗性持続的PYY放出を誘発した。同様に、βAla-NKAは、大腸粘膜標本からのTTX抵抗性持続的5-HT放出を誘発した。このβAla-NKA誘発5-HT放出は、PYY-Y1受容体拮抗薬BIBO3304およびPYY-Y2受容体拮抗薬BIIE0246存在下、部分的に減少した。さらに外因性に与えたPYYは、大腸粘膜標本からの5-HT放出を持続的に増強した。【結論】大腸粘膜L細胞に分布するNK2受容体の刺激は持続的なPYY放出を誘発し、大腸粘膜からのNK2受容体作動性5-HT放出は、内因性に放出されたPYYによって仲介されるものと考えられた。よって、PYY含有L細胞は、EC細胞からの5-HT放出において調節的な役割を担っているものと考えられる。
索引用語 セロトニン(5-HT), peptide YY