セッション情報 シンポジウム13(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

炎症と消化器癌

タイトル 外S13-9:

肝におけるPPARγ活性亢進に伴う抗炎症作用の解明および肝細胞癌におけるPPARγ発現の意義の検討

演者 久保木 知(千葉大大学院・臓器制御外科学)
共同演者 野島 広之(千葉大大学院・臓器制御外科学), 宮崎 勝(千葉大大学院・臓器制御外科学)
抄録 【目的】PPARγは脂肪代謝を調節する転写因子だが、一方で、PPARγ活性亢進は抗炎症作用を示し、組織障害を軽減するとされる。また、PPARγ活性亢進は細胞増殖抑制、アポトーシス誘導により抗腫瘍効果を発揮する。よって、肝細胞でのPPARγ活性亢進の抗炎症作用及び組織障害軽減作用を評価し、肝細胞癌 (HCC) でのPPARγ発現機序を解明することにより、HCCにおけるPPARγ発現の予後因子としての意義を検討する。【方法】マウスI/R障害肝でPPARγ活性関連因子発現を測定、PPARγ agonist投与の影響を検討し、PPARγ活性亢進に伴う抗炎症作用及び組織障害軽減作用を評価。また、HCCでのPPARγ発現及び活性化機序を解明し、活性亢進による抗炎症作用に伴う抗腫瘍効果を評価。HCCにおけるPPARγ発現の予後因子としての意義を検討。【成績】マウスI/R障害肝では、肝組織中15d-PGJ2発現低下及びPPARγ-p300 complex形成低下に伴うPPARγ活性抑制を認めた。PPARγ agonist投与で肝I/R障害時のPPARγ活性は亢進し、肝の炎症性障害は軽減した。PPARγ+/-マウスでは、肝I/Rに伴う炎症性障害の増強を認めたが、肝切除後の肝再生は抑制された (Kuboki et al. Hepatology 2008)。次にPPARγの抗炎症作用がHCC増殖に及ぼす影響を検討。HCC癌部ではPPARγの発現増強及び活性亢進を認め、それには15d-PGJ2発現の増強に基づくparacrine機序の関与が推測された。HCCでのPPARγ高発現群は低発現群よりも根治的肝切除術後の予後が有意に良好であった。更にはin vitroで、PPARγ agonistはHCC cellにおけるPPARγ活性を亢進して癌細胞増殖を抑制したが、PPARγ antagonistはPPARγ活性を抑制して癌細胞増殖を亢進した。【結論】PPARγ活性亢進は肝の炎症性障害を軽減し、肝細胞増殖を抑制する。HCCでは周囲より分泌される15d-PGJ2がHCC内のPPARγ発現を増強してPPARγ活性が亢進し、抗炎症作用に基づく抗腫瘍効果を示す。また、HCCにおけるPPARγ発現の程度はHCC術後の予後予測因子となりうる。
索引用語 PPARγ, HCC