セッション情報 シンポジウム14(肝臓学会・消化器病学会合同)

代謝性・遺伝性肝疾患研究の進歩

タイトル 肝S14-1:

ウイルソン病蛋白(ATP7B)を介した肝細胞内での銅代謝機構

演者 原田 大(産業医大・3内科)
共同演者 柳本 親利(久留米大・消化器内科DELIMITERやなぎもと内科)
抄録 【目的】ウイルソン病は常染色体劣性遺伝により遺伝する銅排泄障害による先天性銅過剰症である。本疾患遺伝子は、1993年にcloningされた。この遺伝子がATP7Bであり、ウイルソン病ではこの遺伝子に変異が存在することにより遺伝子産物であるウイルソン病蛋白(ATP7B)の機能に異常を来たし、肝細胞から毛細胆管への銅の排泄に障害が生じる。我々はこの蛋白が後期エンドゾームに存在することを示したが、ATP7Bの細胞内局在ならびに肝細胞内での銅代謝機構に関しては現在も論争中である。Niemann-Pick type Cは先天性の脂質代謝異常症であり、その原因遺伝子のひとつはNPC1である。その遺伝子産物のNPC1は後期エンドゾームに存在し、エンドゾームからゴルジ装置への小胞輸送に関与している。今回我々はNPC1の機能の阻害もしくは促進がATP7Bの局在ならびに銅結合型セルロプラスミン(holo-Cp)の分泌に如何なる影響を及ぼすかを検討した。【方法】Huh7細胞を使用し、ATB7Bの局在をGFP-ATP7Bと間接蛍光抗体法で検討した。Holo-Cpの細胞外への分泌をウエスタンブロットにて検討した。細胞内の膜輸送をNPC1の機能阻害剤であるU18666A、NPC1 siRNA1によるNPC1のknock downならびにNPC1の遺伝子導入による過剰発現で調節した。NPC1の機能阻害状態を電顕にて観察した。【結果】ATP7Bはゴルジに局在する蛋白とは共在せず、後期エンドゾームに局在するNPC1やlamp1、2と共在した。NPC1の機能を阻害した状態では後期エンドゾームとライソゾームが癒合しており、その状態ではATP7Bはその癒合した小器官に存在した。NPC1の機能を阻害した場合にはCpへの銅の結合が障害されholo-Cpの分泌が阻害された。これらの変化はNPC1の過剰発現によりcancelされた。【結論】ATP7Bは後期エンドゾームに存在し銅を細胞質から内腔へ取り込み、その銅はライソゾームを経て毛細胆管へ排泄されるかNPC1に依存する小胞輸送にてゴルジ装置に輸送されると考えられた。
索引用語 ウイルソン病, ATP7B