セッション情報 シンポジウム14(肝臓学会・消化器病学会合同)

代謝性・遺伝性肝疾患研究の進歩

タイトル 肝S14-2:

ウイルソン病発症時の血清AST・ALT値は臨床病型を反映するが、臨床病型は遺伝子型に支配されない

演者 矢野 元義(市立四日市病院・消化器科)
共同演者 巽 康彰(愛知学院大・薬学部薬物治療学), 片野 義明(名古屋大・消化器内科)
抄録 【目的】ウイルソン病はATP7Bの機能異常により肝細胞から毛細胆管中への銅排泄が障害される常染色体性劣性の、治療しなければ肝硬変に至る、肝疾患である。特殊な治療法が確立しているので、病態の自然経過を把握して、初期診断に努めることが重要である。【方法】診断時の正確な臨床情報のある30名の患者について臨床病型と遺伝子型をretrospectiveに調べた。なお2名は治療中断後の再受診時も検討に加えた。臨床病型は急性肝型(H1)、慢性肝型(H2)、神経型(N)に分類した。また、遺伝子型はmissense、insertion/deletion、splice site、unknownに分けて、臨床病型における分布を調べた。遺伝子解析については、各患者から書面による説明と同意書を交換し、各施設の倫理委員会の承認を得て実施した。【成績】初診時の血清AST値とALT値は3つの病型を特徴付けた。H2はALT優位の強い肝細胞障害性を示し、H1になると肝細胞障害性は低下してAST優位になる。Nでは酵素値は正常範囲に入り、肝細胞障害性とその特徴が無くなる。H1におけるASTの一部は溶血によるHb由来と考えられる。強い溶血(貧血と黄疸)を伴うH1ではASTがALTと解離し、ALT値がしばらく正常化する。各臨床病型における遺伝子型の分布には差異が認められなかった。但し、唯一の亜急性肝炎死亡例では大きな欠損のヘテロ保有者であった。【結論】肝硬変の完成したNでは血清酵素値が正常化して肝の原発病巣が隠れる。この時期まで進行してからの診断は、100年前にSAK Wilsonの記述したlenticular degenerationに相当し、許されないであろう。初期の無症候期はALT優位の活動性肝炎が潜在する。この時期にウイルス性肝炎と正確に鑑別診断し、除銅治療を開始することが大切である。
索引用語 ウイルソン病, 臨床病型