セッション情報 シンポジウム14(肝臓学会・消化器病学会合同)

代謝性・遺伝性肝疾患研究の進歩

タイトル 肝S14-3:

わが国の遺伝性鉄過剰症の遺伝子型による臨床像の検討

演者 川中 美和(川崎医大・2総合内科)
共同演者 服部 亜衣(愛知学院大・薬学部薬物治療学), 宮島 裕明(浜松医大・1内科)
抄録 【目的】我々は本邦における古典的ヘモクロマトーシス(HH)はHFEではなく、TFR2によるものであることを最初に報告した。また、HJVの変異が若年型ヘモクロマトーシス(JH)ではなくHHとして発症していることも知った。世界的には網内系の鉄過剰症であるferroportin disease(FP-D: SLC40A1)が認知されており、わが国で発見されたaceruloplasminemia(aCP: CP)はその臓器障害像が特異である。これらの鉄過剰症の臨床像を比較検討した。【対象】鉄過剰症の遺伝子解析として、HFE、HJV、TFR2、SCL40A1、CP を行った。責任遺伝子の判明した18症例の遺伝子型と臨床病型の関連、臨床病型を調査した。また、血清hepcidin25の測定をした。【結果】18例中TFR2 6例、HJV5例、SLC40A1 3例、CP4例であった。TFR2による6例はすべてHHであった。また、HJVによる3例はHH、2例がJHであった。SCL40A1の2例は、軽症型のFP-D A、1例は重症型のFP-D Bであった。TFR2、HJVともに、血清hepcidin25は低値を示した。SCL40A1によるFP-Dの血清hepcidin25は3例とも高値であった。また、4例のCPの血清hepcidin25は低値であった。臨床像はTFR2、HJVの患者は肝線維化の進行を認め、FP-D Bの症例も肝線維化を認めていた。しかし、FP-D AはKupffer細胞にのみ、CPの4例も肝細胞にのみ鉄の沈着を認めるのみで、鉄過剰に比して肝病変は軽微であった。DMはHJVの3例、TFR2の3例、FP-D Bの1例、CP4例で認めた。心不全はHJVの3例、TFR2の1例、CPの1例で認めた。HJVの症例は三徴を合併し2例が、CPも1例が死亡。しかしTRF2では多くは最長20年の経過で良好である。【考察】わが国のHHの主な遺伝子型はTRF2とHJVである。HJV、TFR2とCPの鉄過剰症でもhepcidin-ferroportinの調節経路障害がある。しかし、CPで血清hepcidin25が低下する機序、SLC40A1で血清hepcidin25の高値に対して鉄吸収が持続する背景は不詳である。【結語】遺伝性鉄過剰症は遺伝子型により発現する臨床症状が違い重症度が異なるため遺伝子型を検討することが重要である。
索引用語 ヘモクロマトーシス, 遺伝子型