セッション情報 |
シンポジウム14(肝臓学会・消化器病学会合同)
代謝性・遺伝性肝疾患研究の進歩
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タイトル |
肝S14-7:NASHにおける鉄代謝異常の機序と除鉄療法の効果の検討
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演者 |
宮西 浩嗣(札幌医大・4内科) |
共同演者 |
田中 信悟(札幌医大・4内科), 加藤 淳二(札幌医大・4内科) |
抄録 |
【目的】現在までのところNASH発症の詳細な機序は不明であり、NASH患者に対する具体的な治療介入方法は確立されていない。これまでに我々は、NASH患者では鉄吸収亢進が生じており、鉄過剰状態がNASH発症の一因であることを示してきた。本研究ではNASH患者における鉄代謝異常の発生機序を検討した。さらに鉄代謝異常に焦点をあてた治療介入方法のひとつとしての除鉄療法の有効性について検討した。【方法】肝生検によりNASHと診断した35症例を対象とした。血清ヘプシジンはNASH患者の血清を用いて液体クロマトグラフータンデム質量分析(LC-MS/MS)法で測定した。ヘプシジンおよびヘモジュベリンmRNA発現量は生検肝組織を用いてreal time PCR法で測定した。NASH患者十二指腸生検粘膜からmRNAを採取して、鉄吸収関連分子(DMT1,Ferroportin-1)の発現を検討した。また腸管上皮形質をもつように分化させたCaco-2細胞をNASH患者血清とともに培養し、鉄吸収関連分子の発現を測定するとともに、鉄調節蛋白であるIRPの活性をEMSAにより解析した。除鉄療法は既報に従い施行し、治療前後での肝細胞傷害程度、酸化的DNA傷害程度、鉄代謝とアディポサイトカイン値を比較した。【結果】NASH患者では健常人に比べ、血清ヘプシジン濃度、肝ヘプシジン、ヘモジュベリン、十二指腸DMT1発現が有意に増加していた。腸管上皮様Caco-2細胞にNASH患者血清を添加し培養したところコントロール血清処理によるものと比べDMT1発現が増加し、IRP活性も増強していた。除鉄療法開始前後の血清ALT値、血清フェリチン値は有意に低下し、血清アディポネクチン濃度の増加も認められた。【結論】NASH患者では鉄過剰を反映して肝ヘモジュベリンが増加しヘプシジン発現も増強していたが、十二指腸DMT1発現の増加のため相対的に鉄吸収亢進が持続している。その機序はIRP活性増加による、IREを介したものであることが示唆された。NASH患者において、除鉄療法が過剰鉄由来酸化ストレスの抑制のみならず肥満改善にはたらくことにより肝障害の軽減に有用であった。 |
索引用語 |
NASH, 鉄過剰症 |