セッション情報 シンポジウム12(消化吸収学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

食欲・消化吸収をめぐる生理活性物質の新展開

タイトル 消S12-5:

脂肪の摂食、吸収、代謝調節に関わるガラニンの意義

演者 永瀬 肇(横浜労災病院・消化器病センター)
共同演者 藤原 研司(横浜労災病院・消化器病センター), G. A.  Bray(Pennington Biomedical Research Center)
抄録 【目的】ガラニンは摂食調節作用を有する脳―腸ペプチドである。ラットによる動物実験成績とヒトでのガラニンの変動から、ガラニンの摂食、消化・吸収、代謝調節における意義を検討した。【方法】SD系雄性ラットの第III脳室にガラニンを投与し摂食量と肩甲間部褐色脂肪組織(IBAT)に分布する交感神経活動を測定した。次にガラニン静脈投与による膵液・胆汁分泌、胃酸分泌、肝PDH活性、迷走神経求心性電気活動を測定した。またヒトにおける血中ガラニン、レプチン、血糖、中性脂肪(TG)、総コレステロール(TC)を測定し、BMIとの関連性を検討した。【結果】ラットではガラニン中枢投与により特異的な脂肪食摂食亢進が起き、IBATの交感神経活動は低下した。ガラニン末梢投与により胃酸分泌は抑制、膵酵素分泌は抑制されたが重炭酸分泌は抑制されず、胆汁分泌は亢進、迷走神経求心性活動は低下した。門脈血中インスリン濃度は低下したが血糖の変動はなかった。肝PDH活性は抑制傾向を示した。ヒトではBMI30以上群で25以下群よりも血中ガラニン、TGとも高く、TC、血糖はBMIによる差はなかった。レプチンはBMI30以上群で高い傾向を示したが有意差はなかった。【考察】ラットの実験から、ガラニンは視床下部に作用して脂肪食摂食亢進と熱産生抑制を起こす。消化管では脂肪吸収に有利な環境が形成され、糖の吸収は亢進しない。末梢から中枢への迷走神経性摂食制御シグナルは抑制される。以上からガラニンは脂肪系優位の体内環境を形成し脂肪蓄積に働く。ヒトにおいてもTGや体脂肪とガラニンの間に正の相関が認められる。レプチンはガラニンの摂食亢進作用に拮抗するとの報告があるが、今回の結果から、肥満群ではガラニンの作用が優位でレプチンには抵抗性が生じている可能性が考えられた。【結論】ガラニンは中枢作用、消化液分泌や自律神経系への調節作用などにより、脂肪系優位の摂食、吸収、代謝環境を形成するとともに、positive feedbackの機構を成立させることにより脂肪蓄積に働く重要なペプチドである。
索引用語 ガラニン, 脂肪蓄積