セッション情報 シンポジウム14(肝臓学会・消化器病学会合同)

代謝性・遺伝性肝疾患研究の進歩

タイトル 消S14-8:

C型慢性肝疾患におけるGLP-1とDPP-4の動態と肝細胞GLP-1シグナル伝達機構

演者 伊藤 実(久留米大・消化器内科)
共同演者 川口 巧(久留米大・消化器内科DELIMITER久留米大・消化器疾患情報), 佐田 通夫(久留米大・消化器内科DELIMITER久留米大・消化器疾患情報)
抄録 【目的】C型慢性肝疾患では高頻度に耐糖能異常を合併する。消化管ホルモンであるglucagon-like peptide-1 (GLP-1)や,その不活化酵素dipeptidyl peptidase IV (DPP-4)は耐糖能異常の発現に関わるが、C型慢性肝疾患での動態は不明である。今回、C型慢性肝疾患における、GLP-1とDPP-4の変化と培養肝細胞におけるGLP-1シグナル伝達機構について検討した。【方法】検討1) 健常者群(CON: n = 48)、HCV感染群(n = 94)、HBV感染群(n = 37)を対象とし、血中活性型GLP-1濃度とDPP-4濃度を測定した。また、組織中DPP-4の発現(回腸末端、肝組織、血液)についても評価した。検討2) ヒト培養肝細胞 (OUMS-29)の培養液にGLP-1 アナログ (1mM)を添加したEx群、glucagon (1mM)を添加したGLU群、exenatide (1mM)+glucagon (1mM)を添加したEx+GLU群、また無添加の対照群 (CON群;各群n=5)を作製し、培養液中glucose濃度を添加後12時間まで測定した。各群間の培養液中glucose濃度の曲線下面積 (g-AUC)を比較検討するとともに、IRS-1, pIRS-1、GSK3β、pGSK3βの発現をWestern blottingにより検討した。【成績】結果1) HCV群の血中活性型GLP-1濃度は、CON群およびHBV群と比較して有意に低下していた(CON: 7.5±0.6, HBV: 7.0±0.5, HCV: 4.9±0.3 ng/mL P<0.01)。一方、回腸末端、肝組織、血中におけるHCV群のDPP-4発現は、CON群に比べて有意に上昇していた。結果2) Ex群のg-AUCはCON群, GLU群, Ex+GLU群と比較し、有意に低値であった (CON; 1863±66, GLU; 1849±11, Ex+ GLU; 1841±31, Ex; 1673±65, P<0.05)。また、GLP-1受容体、IRS-1、pIRS-1、GSK3βの発現は、各群で差を認めなかったが、pGSK3βの発現は、Ex群において低下していた。【結論】本研究により、C型慢性肝炎患者では、GLP-1とDPP-4の動態に変化を認める事が明らかとなった。また、GLP-1は、GSK3βの抑制を介して肝glycogenの合成を促進することで、直接的に肝細胞の糖取り込みを亢進する可能性が示唆された。
索引用語 HCV, GLP-1