セッション情報 |
シンポジウム14(肝臓学会・消化器病学会合同)
代謝性・遺伝性肝疾患研究の進歩
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タイトル |
消S14-11:急性間欠性ポルフィリン症における遺伝子解析
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演者 |
前田 直人(鳥取大・機能病態内科) |
共同演者 |
村脇 義和(鳥取大・機能病態内科), 堀江 裕(済生会江津総合病院・内科) |
抄録 |
【目的】急性間欠性ポルフィリン症(AIP)は、ヘム合成系酵素のひとつであるハイドロキシメチルビレンシンターゼ(HMBS)の活性低下によって前段階のδ-アミノレブリン酸やポルフォビリノゲンが体内に過剰蓄積し、急性症状や神経障害を呈する遺伝性疾患である.我々はこれまでに本邦AIP症例の遺伝子解析を試みてきたが、今回あらたな解析例を提示し、AIPにおける遺伝子解析の意義について考察したい.【方法】互いに縁戚関係のない本邦8家系14症例を対象とした.解析した中には、生化学的にはポルフィリン症は否定的でありながら臨床症状のみからAIPを疑われたもの(2家系2症例)も含まれる.末梢血DNAを用いてHMBS遺伝子の各エクソンを含む領域それぞれにつきPCR増幅を行ったのち塩基配列を決定し、変異の有無を確認した.【結果】今回確認された変異は 1) イントロン5:+5c→a、2) エクソン9: 490delA、3) エクソン10: 517c→t (R173W)、4) エクソン12: 730delCT、5) エクソン12: 733delC、6) イントロン13:+3del aagt の6種類であり、それぞれ家系ごとに異なっていた.これらの変異により酵素活性の低下をきたしたものと推定される.子への遺伝に対する不安から解析希望のあった2家系において家族解析を行ったところ、どちらの家系も次世代への変異の遺伝は認められなかった.また、臨床症状のみからAIPを疑われた2症例ではいずれもHMBS遺伝子の変異はみられなかった.【結論】AIPにおける遺伝子解析は、診断の確定のみならず、家系内保因者の早期発見、あるいは変異の有無を確認することで患者家族の精神的苦悩の緩和や緩和にも有効であると考えられた.一方、生化学的にAIPが否定的な症例に対しては、現時点では、疾患スクリーニングを目的とした遺伝子解析はきわめて非効率的な手段であるといわざるをえない. |
索引用語 |
ポルフィリン症, 遺伝子診断 |