セッション情報 シンポジウム15(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)

肝硬変患者の栄養マネージメント、治療

タイトル 肝S15-1:

肝硬変患者におけるエネルギー低栄養状態の指標としてのパラメーターの検討~呼吸商の代替として~

演者 寺倉 陽一(岐阜大附属病院・消化器内科)
共同演者 白木 亮(岐阜大附属病院・消化器内科), 森脇 久隆(岐阜大附属病院・消化器内科)
抄録 【目的】肝硬変患者におけるエネルギー低栄養状態は患者の予後や生活の質を悪化させることが知られている。その指標として呼吸商の有用性が報告されており、同値が0.85以下の患者では、特に有意に予後不良であるとされている。そのため、呼吸商を指標としての栄養療法を行うことは有用であり、肝機能や生活の質の改善も報告されている。しかし、呼吸商の測定には間接カロリーメーターという費用のかかる機械が必要であるため、広く日常臨床で利用できない難点がある。今回、一般病院でも利用しうる呼吸商の代替マーカーについて検討を行ったので報告する。【方法】岐阜大学医学部附属病院消化器内科入院中の肝硬変患者44例を対象とした。検査前夜18時の夕食後より絶食とし、検査当日午前7時から9時の安静臥床時に間接カロリーメーターを用いて呼吸商を測定した。また同時に血液検査、熟練した栄養士による身体計測を行った。呼吸商及び得られたパラメータについて単回帰分析を行い、相関性を検討した。また受信者動作特性(ROC)解析を用いて呼吸商が0.85となるカットオフ値を検討した。【結果】%AC(arm circumference)(r2=0.204、p=0.0021)、%AMC(arm muscle circumference)(r2=0.178、p=0.0043)に呼吸商との正の相関が認められた。予後の指標となる呼吸商0.85に対する各々のカットオフ値は、%AC 95、%AMC 92であった。また本研究においては、他の身体計測値を含めたその他パラメータと呼吸商の間には有意な相関が認められなかった。さらに%AC=95、%AMC=92で患者を層別化し累積生存率を算出したところ、%ACについてのみ有意差が認められた。【結論】%AC、%AMCは呼吸商と有意に相関が認められた。またこれらのカットオフ値は既報より早期にエネルギー低栄養状態が発生していることを示唆していると考えられた。今後、これらの値を参考としてより早期に就寝前食導入などの栄養療法を行うことが必要と考えられる。
索引用語 呼吸商, 間接カロリーメーター