セッション情報 シンポジウム15(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)

肝硬変患者の栄養マネージメント、治療

タイトル 消S15-3:

肝硬変患者における栄養摂取状況の現状

演者 鈴木 壱知(獨協医大越谷病院・消化器内科)
共同演者 高後 裕(旭川医大・消化器・血液腫瘍制御内科), 鈴木 一幸(岩手医大・消化器・肝臓内科)
抄録 【目的】慢性肝疾患において脂肪肝や糖尿病の合併が病態の進行や発癌に影響することが指摘され,そのため栄養治療の重要性が認識されるようになってきた.肝疾患に対して栄養治療を行うためには慢性肝疾患患者の栄養摂取状況を把握することが重要である.そこで今回,われわれは慢性肝疾患患者の栄養摂取状況について検討を行った.【方法】対象は本研究に参加した10施設に通院中の肝硬変患者180名(男性68名,女性112名,平均年齢69歳,HBV14名,HCV150名,その他16名)である.栄養摂取状況は3日間の記録法と管理栄養士によるアンケート調査によりエネルギー摂取量,三大栄養素(タンパク質,脂質,炭水化物)と鉄,亜鉛の摂取状況について検討を行った.【成績】標準体重あたりの総摂取エネルギー量は30.9±7.3kcal/kgであり,日本病態栄養学会の摂取基準(2003年)で適正(90~110%)40.2%(72/179),摂取不足(90%未満)35.2%(63/179),摂取過剰(110%超)24.6%(44/179)であった.タンパク質摂取量は1.2±0.3g/kgであり,日本病態栄養学会の摂取基準で適正(1.0~1.5g/kg)57.2%(103/180),摂取不足23.9%(43/180),摂取過剰18.9%(34/180)であった.脂質エネルギー比が20~25%は35%(63/180),不足(20%未満)32.2%(58/180),過剰(25%超)32.8%(59/180)であった.炭水化物の摂取量は,肝硬変で4.6±1.1g/dlであった.更に栄養指導歴の有無で検討した.鉄の摂取量は7.2±2.2mg/day,亜鉛の摂取量は7.2±1.9mg/dayであった.総摂取エネルギー量が適切な患者は栄養指導歴がない場合29.4%栄養指導歴のある場合45.8%であり,提要指導は摂取エネルギー量を適正にする傾向がみられた. 【結論】肝硬変患者の栄養摂取状況は現在の飽食の時代を反映して必ずしも不十分ではなく,栄養指導により栄養摂取状況を適切にすることが必要であると考えられた.
索引用語 肝硬変, 栄養摂取状況