セッション情報 シンポジウム15(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)

肝硬変患者の栄養マネージメント、治療

タイトル 肝S15-5:

肝硬変症に合併する“眠気”に対する評価と加療

演者 市川 辰樹(長崎大大学院・消化器病態制御学)
共同演者 田浦 直太(長崎大大学院・消化器病態制御学), 中尾 一彦(長崎大大学院・消化器病態制御学)
抄録 【目的】肝硬変の合併症としての睡眠障害に関しての検討は少ない。しかし、肝硬変症例において昼間の眠気という自覚症状は頻繁に聴取するところであり、肝疾患の治療によって眠気が改善することも経験する。肝硬変症と眠気の関係を明らかにするために、顕性肝性脳症を認めない肝硬変症例において昼間の眠気を評価し、それの肝不全経口栄養剤内服による変化を検討した。【方法】当院外来にて経過観察中の肝硬変症例21例を無作為に2群に分け、肝不全経口栄養剤(Fischer比38、210kcal、22時内服)を眠前に1包内服するLES群12例(ウイルス性8例、アルコール性2例、他2例、男性7例、平均Child-Pughスコア6.36、平均年齢66.2歳)と経過観察群9例(ウイルス性6例、アルコール性2例、他1例、男性4例、平均Child-Pughスコア6.33、平均年齢67.4歳)として8週間観察した。評価項目は眠気の評価としてエップワース眠気尺度(ESS)、他に血液生化学的項目、肝硬変の症状をスコア化した当科独自の肝疾患症状アンケートスコア(LSS)を用い両群で比較検討した。【成績】LESによる介入前のESSにおいて有意に眠気があると判断される10点以上の症例は5例(23.8%)に認めた。全体のESS平均点は6.38点であった。介入前のChild-Pughスコア(CPS)はLSSとの間に正の相関が認められたが、ESSとの間には相関を認めなかった。治療前のすべての評価項目で両群間に有意差はなく、かつ治療終了後の項目にも両群間で有意差は認められなかった。しかし、治療開始前と治療終了時との差を比較するとLES群ではESS減少量が優位に多く、LES群で眠気改善効果を認めた。【結論】肝硬変症例23%に眠気を認めた。治療前のCPSとの相関を認めたLSSは肝障害度を反映する簡便なアンケートである。ESSはCPSとLSSとの相関がなく、肝障害度との関連は乏しいと考えられた。しかし、ESSはLESによって改善しており、眠気と分枝鎖アミノ酸との関連が示唆された。肝硬変における眠気の原因として潜在性肝性脳症や睡眠障害が疑われるがその詳細についてはさらに検討が必要である。
索引用語 肝硬変, 眠気