セッション情報 シンポジウム12(消化吸収学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

食欲・消化吸収をめぐる生理活性物質の新展開

タイトル 消S12-6:

グレリンシグナルの増強は癌性悪液質を改善する

演者 浅川 明弘(鹿児島大大学院・心身内科学)
共同演者 山口 武人(千葉県がんセンター・消化器内科), 乾 明夫(鹿児島大大学院・心身内科学)
抄録 [目的]癌性悪液質は、摂食量低下、体重減少、精神的苦痛などの症状を有し、癌における主要な死因の一つである。我々はこれまでに、グレリンが構造上モチリンと類似性を有し、食欲、体重、腸管運動、不安などの調節に関与していることを報告している。本研究は、癌性悪液質における食欲不振などの病態、グレリンシグナルの役割、及びその臨床応用の可能性について検討した。[方法]担癌ラットを用い、摂食量、腸管運動、不安様行動、生存日数、筋肉量、血中アシルグレリン、コルチコトロピン放出因子(CRF)投与による血中アシルグレリン、CRF受容体拮抗薬投与による摂食量、グレリン受容体拮抗薬、六君子湯および活性成分投与による生存日数などを測定した。またグレリン受容体発現細胞を用い、六君子湯および活性成分による細胞内カルシウムイオン濃度の変化を測定した。[成績]担癌ラットにおいてグレリン分泌不全とグレリン抵抗性の両方が認められた。CRFはアシルグレリンの血中レベルを低下させ、CRF受容体拮抗薬α-helical CRFは担癌ラットの摂食量を増加させた。グレリン受容体拮抗薬(D-Lys3)-GHRP-6は、担癌ラットの摂食量を減少させ、生存日数を短縮させた。六君子湯は担癌ラットの摂食量減少、消化管運動不全、筋肉量低下および不安様行動を改善させ、生存日数を延長させた。さらに六君子湯の活性成分であるヘスペリジンおよびアトラクチロジンは、それぞれグレリンの分泌および受容体シグナルを増強し、アトラクチロジンは担癌ラットの生存日数を延長させた。[結論]癌に伴う食欲不振などの病態には、CRFを介したグレリンシグナルの低下が関与し、グレリンシグナルの増強が生存日数を延長させることが認められた。グレリンシグナルを増強させることが、癌性悪液質患者に対する有効な治療法になる可能性が示唆された。
索引用語 グレリン, 悪液質