セッション情報 シンポジウム15(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)

肝硬変患者の栄養マネージメント、治療

タイトル 肝S15-6:

アルブミンの構造的・機能的変化からみた分岐鎖アミノ酸治療の意義

演者 瀬戸山 博子(熊本大大学院・消化器内科学DELIMITER熊本労災病院・内科)
共同演者 田中 基彦(熊本大大学院・消化器内科学), 佐々木 裕(熊本大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】ヒト血清アルブミン(HSA)は、N末端から34番目のシステイン残基の状態より酸化型、還元型に分類されるが、このような構造の多様性は機能変化に結びついている。慢性肝疾患におけるHSAの構造的・機能的変化および分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤投与による変化を解析した。【対象と方法】健常者13例、慢性肝炎(CH) 36例、肝硬変(LC) 101例(Child-Pugh A 52, B 33, C 16)を対象として、HPLCおよび質量分析によりHSAの構造的変化を解析した。機能解析としてDPPH/Peroxy Radical消去能、ヒドロペルオキシドを定量化するd-ROMs testと抗酸化ポテンシャルテストにより抗酸化能を、またサイトI、IIのリガンド結合能について評価した。LC 23例ではBCAA製剤の投与による経時的な構造的・機能的変化を評価した。【成績】HSAは健常者4.7±0.2、CH 4.2±0.3、LC 3.3±0.6g/dLで、酸化型は健常者21.3±2.1、CH 26.6±3.3、LC 37.0±8.8%と肝疾患の進行に伴い有意に高値であった。Child-Pugh分類の進展に伴いHSA値は有意に低下し、酸化型比は上昇した。絶対量は、肝疾患の進行に伴い還元型は有意に低下したが、酸化型には差はなかった。機能解析では健常者に比較して肝硬変例において、DDPH/Peroxy Radical消去能、抗酸化ポテンシャルは有意に低下し、HSAのサイトIへのビリルビン結合能、サイトIIへのケトプロフェン、Lトリプトファン結合能は有意に低下していた。LC例のBCAA投与前後の検討では、投与後6ヵ月まで経時的にHASと還元型HAS量の平均値は有意に上昇し、酸化型比は低下した。投与前と3カ月後の比較では、HASは23例中17例が上昇、2例が同値、4例が低下した。3カ月後にHASが上昇または同値であった19例では全例還元型HSA値は上昇しており、低下した4例ではいずれも酸化型比が改善していた。【結論】慢性肝疾患におけるHASの構造変化は機能変化と関連しており、BCAA投与はHSA値の上昇のみならず、主に還元型の上昇に基づく機能改善から総合的な病態改善に繋がることが期待される。
索引用語 アルブミン, 分岐鎖アミノ酸