抄録 |
【目的】C型慢性肝炎 (CHC)では肝細胞内に増加した鉄がフリーラジカル産生に働きDNA損傷を引き起こしそれが肝発癌につながる可能性が想定されている。我々は、主にIFN治療抵抗性のCHCに対して鉄制限食事療法および瀉血療法を併用した除鉄療法を約15年に渡り施行し、本法により肝炎活動性、肝線維化および酸化的DNA傷害が改善されることを報告してきた。本検討では、CHC症例に対する除鉄療法のこれまでに認められた肝発癌抑制効果を解析し、また鉄制限食事療法のコンプライアンスを向上させる試みの効果と治療前後の健康関連QOLの変化についても検討した。【方法】2011年までに当科でCHC診断し除鉄療法を施行したCHC 35症例を対象とした。既報(kato et al, Cancer res)に従い瀉血を施行し、併せて鉄制限食事療法(1日鉄摂取量5-7mg)を行った。CHC症例に対する除鉄療法の肝発癌抑制効果についてはIFN療法および除鉄療法を受けていない40例(非除鉄群)を対照群として年次発癌率をKaplan-Meier法により比較検討した。QOL調査はSF-36v2を用いて行った。【成績】CHC症例において非除鉄群と比較し除鉄群で発癌率が有意に低下した(p=0.0099)。栄養指導により一日鉄摂取量は6.5mgと良好なコンプライアンスが得られ、また本法により身体的QOLの向上が認められた。【結論】長期除鉄療法は有意に肝発癌を抑制し、厳密な鉄制限食事療法による肝鉄量の減少がこれに寄与すると考えられた。 |