セッション情報 シンポジウム15(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)

肝硬変患者の栄養マネージメント、治療

タイトル 肝S15-10:

肝硬変患者における耐糖能異常評価による栄養療法個別化の必要性

演者 土屋 昌子(山口大・消化器病態内科学)
共同演者 山崎 隆弘(山口大・消化器病態内科学), 坂井田 功(山口大・消化器病態内科学)
抄録 【目的】肝硬変患者における分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤を用いたlate evening snack(LES)はエネルギー代謝を改善させるが、糖尿病合併肝硬変患者での長期LES投与は耐糖能を悪化させることを、我々は報告している。すなわち肝硬変患者の耐糖能異常の把握は、栄養治療のマネージメントに欠かせない重要な因子である。今回、肝硬変患者における75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の評価による栄養治療の個別化について考察した。【方法】空腹時血糖(FBS)110mg/dl未満およびHbA1c基準値以下の肝硬変患者148例(M/F: 69/79, 年齢: 64±17, Child-Pugh A/B: 82/66, 原因: B/C/B+C/others=94/23/5/26) にOGTTを施行。【結果】OGTT血糖2時間値(2h-PG)での糖尿病型は43%で、その73%にインスリン抵抗性(HOMA-R2.5以上)を認めた。境界型(2h-PG 140~199mg/dl)は31%に認め、その70%がインスリン抵抗性を伴っていた。2h-PGは140mg/dl未満でも血糖1時間値(1h-PG)が180mg/dl以上の境界型は全体の13%に認め、その74%にインスリン抵抗性を認めた。血糖は基準値内でインスリン抵抗性のみを認める症例は7%であった。【考察】空腹時血糖正常の肝硬変患者の約80%に耐糖能異常を認め、肝硬変患者にはOGTTによる耐糖能の評価が不可欠である。耐糖能異常の約70%にインスリン抵抗性を認めるが、インスリン抵抗性を伴わない症例も存在する。その結果も踏まえ、BCAAを含めたLESや糖尿病治療薬の併用などを検討すべきと考える。【結語】肝硬変患者の糖代謝異常のパターンは様々で、耐糖能異常とインスリン抵抗性の関与には程度の差があり、栄養治療に際して個別化治療が必要と考えられる。現在、我々は、OGTTによる評価でのLES+αグルコシダーゼ併用の臨床研究(UMIN000004158)も推進中である。
索引用語 OGTT, LES