セッション情報 シンポジウム15(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)

肝硬変患者の栄養マネージメント、治療

タイトル 消S15-12:

肝硬変合併肝癌治療におけるBCAA含有経腸栄養剤の有用性

演者 遠藤 龍人(岩手医大・消化器・肝臓内科)
共同演者 黒田 英克(岩手医大・消化器・肝臓内科), 鈴木 一幸(岩手医大・消化器・肝臓内科)
抄録 【目的】肝細胞癌(HCC)に対するラジオ波焼灼療法(RFA)の普及に伴い、癌局所制御に加え肝予備能維持も重要な予後因子である。我々は、RFAを施行した肝硬変合併HCCにおけるBCAA含有経腸栄養剤のエネルギー代謝、肝機能およびQOLに及ぼす影響を検討した。
【方法】対象は、2005年から2006年までに当科で局所根治を目的としてRFAを施行した初発HCC35例。男性22例、女性13例、平均年齢66.9歳。Child-Pugh分類 A:B/26:9例。栄養指導に加えてBCAA含有経腸栄養剤を服用開始したBCAA群20名と栄養指導のみのControl群15名の2群に無作為割付し、術前、術後3ヶ月の肝予備能(Alb, T-Bil, PT, BTR)、エネルギー代謝 (間接熱量測定)、SF-8の変化を比較した。両群とも30~35 kcal/kg(標準体重)、蛋白質1.0~1.2 g/kgで栄養指導し、BCAA群ではアミノレバンEN®100 gを服用開始とともに、投与分の420 kcal、蛋白質27 gを減量して指導した。
【成績】(1)両群の術前肝機能、腫瘍因子に有意差は認めず、BCAA群の75%がBCAA製剤を全量服用していた。(2)観察期間の中央値は155日で6件のイベントが発生し、イベントフリー生存率はBCAA群において高値であった。(3)Albの推移はBCAA群で投与前3.18 g/dl、6ヶ月で3.25 g/dlと有意に上昇した(P<0.05)。また、BCAA群のnpRQは0.81から0.86に有意に上昇し (P<0.01)、糖質の燃焼比率は25.6%から43.97%へ、脂質は45.6%から30.1%へ有意に改善した(P<0.01)。(4)BCAA群では、SF-8におけるGH、PF、SFスコアが有意に増加した(P<0.05)。
【結語】肝硬変合併肝癌に対するBCAA含有経腸栄養製剤の早期の服用は、術後短期間の肝予備能の維持、QOLの改善に有用である。
索引用語 肝細胞癌, 分岐鎖アミノ酸療法