セッション情報 シンポジウム16(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

肝・胆道疾患と脂質代謝を見直す-消化吸収異常の関与とその治療-

タイトル 消S16-1:

コレステロール胆石形成におけるアディポネクチンの意義

演者 荻山 秀治(大阪大・消化器内科)
共同演者 木曽 真一(大阪大・消化器内科), 竹原 徹郎(大阪大・消化器内科)
抄録 【目的】アディポネクチンは脂肪組織から分泌される生理活性物質で血清アディポネクチン値は肥満度と逆相関し、低アディポネクチン血症はインスリン抵抗性を増悪させることが知られている。以前よりコレステロール胆石のリスクファクターとして肥満の報告が多数なされているが、最近血清アディポネクチン値とコレステロール胆石の間に負の相関関係があることが報告された。しかし、胆石発生過程におけるアディポネクチンの関与はいまだ不明である。今回の検討では、胆石形成におけるアディポネクチンの関与を明らかにすることを目的とした。【方法】アディポネクチンノックアウトマウス(KO)とコントロールマウス(WT)に胆石生成食と通常食を投与し胆石発生率と胆石形成の機序に関係する因子を検討した。【成績】KOマウスで6週間胆石生成食投与後の胆石発生率は有意に高値を示し(42% vs 19%, p<0.05)、生成された胆石の主成分はコレステロールであった。胆石形成に重要な因子である胆汁中の脂質組成は両者で差を認めなかった。コレステロール胆石形成に抑制的に働く胆汁中apoA-1の濃度はKOマウスで低下を認めた。一方、胆嚢壁の炎症の程度を表す胆嚢でのPLA2mRNA発現量はKOマウスで増加を認めた。胆嚢組織像ではKOマウスで胆嚢壁の肥厚と胆嚢上皮への糖蛋白の増加を認めた。また、胆石生成食投与でKOマウスでは血中インスリン値、インスリン抵抗性を示すHOMA-IRがWTマウスに比べ有意に高値を示した。【結論】マウスにおいてアディポネクチン欠損により胆石形成促進が認められた。その原因としてPLA2活性亢進に伴うコレステロール結晶促進因子であるムチン増加と抑制因子であるapoA-1の低下によるnucleating factorの不均衡の関与が示唆され、インスリン抵抗性増悪についても関与が推定された。(共同研究者 広島大学病院総合内科・総合診療科 菅野 啓司、田妻 進)
索引用語 アディポネクチン, 胆石