セッション情報 シンポジウム16(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

肝・胆道疾患と脂質代謝を見直す-消化吸収異常の関与とその治療-

タイトル 消S16-2:

腸管コレステロール吸収抑制による胆汁催石性への長期的影響について~脂質代謝改善薬との併用による胆汁脂質組成変化の臨床的考察~

演者 岸川 暢介(広島大大学院・病態薬物治療学)
共同演者 菅野 啓司(広島大大学院・病態薬物治療学), 田妻 進(広島大大学院・病態薬物治療学)
抄録 【背景と目的】教室では脂質異常症に対するスタチンによる胆汁脂質・胆石形成性(催石性)への影響を報告してきたが、外因性コレステロールの吸収亢進が胆汁中への脂質過剰排泄を惹起することが判明しつつある。一方、腸管コレステロール吸収輸送担体NPC1L1の選択的阻害剤であるEzetimibeが高コレステロール血症治療薬として広く臨床的に用いられているが、その胆汁脂質に及ぼす影響について検討した報告は乏しい。我々はすでにEzetimibeの12週間投与による催石性への影響を検討し胆石症に対する治療介入の意義を報告してきた。今回さらに1年間の変化を踏まえた評価を報告する。【方法】本研究の趣旨を理解し同意を得られた脂質異常症患者を対象にEzetimibe(10mg/day)の投与前と投与3ヶ月後、1年後に血液と十二指腸胆汁を採取した。血清および胆汁脂質成分の分析、血清コレステロール合成マーカー・吸収マーカーの解析を行なった。【成績】1年間Ezetimibeを投薬し、胆汁を採取し得た10例で検討した。血清のT-chol、LDL-Cは減少傾向を示し、コレステロール吸収指標も優位に低下したが、合成指標は増加する傾向にあった。催石指数は、UDCAを内服している8例中不変ないしやや改善は6例、スタチンを併用している1例と胆嚢摘出後の1例では1を越える増悪を認めた。UDCAを内服していない2例では有意な催石指数の改善を認めた。【考察と結語】UDCAが投与されている群では、催石指数の前値がすでに相対的に低く、EzetimibeのAdjuvant効果は顕著ではなかった。一方でUDCA非投与群では、Eetimibeの投与で催石指数が著明に改善しており、脂質異常症患者における胆石の発生予防に寄与する可能性が示唆された。しかし、スタチンに代表される脂質代謝改善薬との併用例ならびに胆嚢摘出例の症例をさらに集積して、Ezetimibe単独投与とUDCAあるいはスタチン併用に基づくAdjuvant効果を比較するとともに、その胆汁脂質動態への影響を評価する必要がある。
索引用語 ezetimibe, 胆汁脂質