セッション情報 シンポジウム16(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

肝・胆道疾患と脂質代謝を見直す-消化吸収異常の関与とその治療-

タイトル 消S16-3:

原発性硬化性胆管炎に対するベザフィブラートの有効性

演者 水野 卓(東京大・消化器内科)
共同演者 平野 賢二(東京大・消化器内科), 小池 和彦(東京大・消化器内科)
抄録 【目的】ベザフィブラート(BF)は脂質異常症治療薬であるが、胆汁中へのリン脂質分泌を促進して、胆汁酸の細胞毒性を軽減するなどの効果が知られており、原発性硬化性胆管炎(PSC)や原発性胆汁性肝硬変などの胆汁うっ滞性疾患に対する有効性が期待されている。今回われわれは、PSCに対するBFの有効性をretrospective/prospectiveに検討した。【方法】2006年11月から2011年4月まで、当科及び関連施設においてBFが投与された7例のPSC患者について、retrospectiveに肝胆道系酵素(ALP/γGTP/AST/ALT)の推移を検討した。また、当科では2008年10月よりPSC患者に対するBF投与のprospectiveな臨床試験を行っている。各々12週間の前観察期間・BF投与期間・後観察期間を設定し、主要評価項目は投与後12週でのALPとし、前観察期間の平均値と比較した。これまで6例で投与が行われ、その途中結果を報告する。BFは脂質異常症治療と同様1日400 mg、分2で投与した。【成績】(1) Retrospective analysis:7例の患者背景は、男:女=3:4、発症年齢57(32~80)歳、BF投与開始までの罹病期間は19(6~97)か月。投与開始時と比較した減少率(RI, reduction index)を見ると、7例中3例で投与開始後3か月、6か月ともに全ての肝胆道系酵素でRIは1未満であり、BFが有効と考えられた。有効例3例の6か月後のALPのRIは0.15、0.42、0.66で、その後の長期投与(51か月、22か月、34か月)でも引き続きBFは有効であった。(2) Prospective analysis:6例中1例で有害事象のため10日で投与が中止された。投与を完遂した5例の患者背景は、男:女=4:1、発症年齢42 (24~53)歳、BF投与開始までの罹病期間は106(7~144)か月。ALP値は投与前の平均679 IU/lから、投与後平均405 IU/lに有意に低下した(P=0.003)。投与後6週時点で既に全肝胆道系酵素の低下が見られ、中止後6週で胆道系酵素は再上昇を認めたが、肝酵素は中止後12週でも改善を維持していた。【結論】BFはPSCにおいて肝胆道系酵素異常を速やかに改善する効果があり、新たな治療薬として期待される。
索引用語 原発性硬化性胆管炎, ベザフィブラート