セッション情報 シンポジウム16(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

肝・胆道疾患と脂質代謝を見直す-消化吸収異常の関与とその治療-

タイトル 肝S16-4:

胆汁酸合成誘導体(INT747)の脂肪肝治療への可能性

演者 宮崎 照雄(東京医大・地域医療振興学DELIMITER東京医大茨城医療センター・共同研究センター)
共同演者 本多 彰(東京医大・地域医療振興学DELIMITER東京医大茨城医療センター・共同研究センターDELIMITER東京医大茨城医療センター・消化器内科), 松﨑 靖司(東京医大・地域医療振興学DELIMITER東京医大茨城医療センター・消化器内科)
抄録 【背景】脂肪肝は多くの代謝性肝疾患に関与するが,その薬物治療は未確立である。胆汁酸は,脂質の消化吸収を助ける働きに加え,核内受容体 FXR のリガンドとなり脂質代謝を抑制的に制御するため,脂肪肝の予防・治療に有用と考えられる。しかし,FXRリガンド作用がより強いケノデオキシコール酸(CDCA)は肝障害を引き起こす危険性がある。これに対し,CDCAの合成誘導体6α-ethylchenodeoxycholic acid (INT747)が,欧米でPBCの胆汁うっ滞に対し臨床応用されているため,脂肪肝にも安全に利用できる可能性がある。そこで,内因性・合成胆汁酸の脂肪蓄積と細胞障害に及ぼす効果の差を,脂質代謝が異なるとヒトとマウスの非癌・癌化培養細胞を用いた脂肪肝モデルにて比較した。【方法】脂肪肝モデルは,ヒト非癌・癌化細胞株(Fa2N-4・HepG2細胞)及びマウス非癌細胞株(AML12細胞)にLXR合成リガンド(To901317)を添加して作成した。胆汁酸50μM(UDCA,CDCA)及びFXR合成リガンド1μM(INT747,GW4064)を,脂肪肝形成前後に添加し,細胞内蓄積中性脂肪量,脂肪酸代謝関連遺伝子発現,細胞障害性について評価した。【結果】CDCAとINT747の双方で,各細胞の中性脂肪合成量の有意な抑制効果が,また,ヒト細胞でのみ有意な脂肪分解効果がみられた。有効な添加濃度において,CDCAでのみ有意な細胞障害性が全細胞でみられた。FXR標的遺伝子SHPは,両種の非癌細胞で有意に上昇し,癌細胞では変化がなかった。ヒト細胞のPPARα標的遺伝子CPT-1(脂肪酸異化系)は,非癌細胞で有意に上昇し,癌細胞では減少した。【結論】培養細胞モデルへの内因性・合成胆汁酸添加により,FXR活性化を介した脂肪酸合成抑制・分解亢進作用が確認された。その作用には種差があり,さらに,癌化細胞では複雑で異なる脂質制御機序が示唆されたが,ヒト非癌細胞の脂肪肝に対し胆汁酸は有効であった。INT747は,CDCAに比し副作用の少ない有用な脂肪肝の治療法として期待される。
索引用語 胆汁酸, 脂肪肝