セッション情報 シンポジウム16(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

肝・胆道疾患と脂質代謝を見直す-消化吸収異常の関与とその治療-

タイトル 消S16-5:

NAFLD/NASHにおける高脂血症治療薬(HMG-CoA 還元酵素阻害剤)の有効性とその役割について

演者 兵庫 秀幸(広島大・消化器・代謝内科)
共同演者 田妻 進(広島大病院・総合内科・総合診療科), 茶山 一彰(広島大・消化器・代謝内科)
抄録 【背景】体内コレステロールは,約50%は肝臓における胆汁酸への異化,約10%はステロイド合成に使われ,約40%はそのまま胆汁とともに便中に排泄されるとされる.一方,メタボリックシンドロームの消化器表現型とされるNAFLD/NASHでは,約70%に高脂血症を合併することが知られ,反対に健診では高脂血症の約40%にNAFLDを合併するとされている.本研究では,高脂血症を伴うNASH治療におけるHMG-CoA 還元酵素阻害剤の有効性とその位置づけについて検討した.【方法】1.Brunt分類に従い診断したIIa,IIb型高脂血症を伴うNASH31症例(男性20例,女性11例,年齢27~68歳).2年間アトルバスタチン10mg/日の投与を行い,治療前後における臨床検査所見組織学的変化について検討した.2.IIa,IIb型高脂血症合併NAFLD20症例(男性9例,女性11例,年齢25歳~75歳,NASH15例)に対し,ピタバスタチン2mg/日を12ヶ月間投与し,治療前後における臨床検査所見組織学的変化について検討した.【結果】両群とも治療前,後におけるBMIには有意な変化を認めなかった.治療に伴い血清脂質,トランスアミナーゼ,高感度CRPの改善などの臨床検査所見の改善を認めた.治療前に認められた食後高血糖,インスリン過分泌,インスリン分泌遅延は,治療後も不変であった.組織所見は,アトルバスタチン群ではNAFLD activity score (NAS)が改善76%,不変24%で,線維化は改善11%、不変65%、悪化24%,ピタバスタチン群ではNASの改善56%,不変11%,悪化33%であり,線維化改善33%,不変45%,悪化22%であった.【結論】NASHの自然史では,38%が線維化悪化,21%が改善と報告されており,脂質異常症合併NAFLD/NASHに対するスタチン治療は動脈硬化性疾患良予防のみならず肝線維化抑面にも有効であり,特に高中性脂肪血症合併高コレステロール血症(IIb型高脂血症)のNAFLD/NASHに有用性が高いと考えられた.
索引用語 NAFLD/NASH, statin