セッション情報 シンポジウム16(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

肝・胆道疾患と脂質代謝を見直す-消化吸収異常の関与とその治療-

タイトル 消S16-6:

NASH病態に対するコレステロール吸収阻害薬エゼチミブの治療効果

演者 米田 正人(横浜市立大・消化器内科)
共同演者 今城 健人(横浜市立大・消化器内科), 中島 淳(横浜市立大・消化器内科)
抄録 【目的】非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は近年増加している肝疾患であるが,NASHに対する薬物療法については未だ確立されていない.エゼチミブは動物実験で脂肪肝改善効果,インスリン抵抗性改善効果が報告されているコレステロール吸収阻害剤であり,治療効果がメタボリクシンドローム全般に及ぶ可能性が報告されている.本研究は脂質異常症を有するNASH患者に6ヶ月間エゼチミブ投与を行い各種パラメーター,肝組織の変化を測定し,メカニズムを動物実験で検討した.【方法】脂質異常症を合併するNASH10人にエゼチミブ10mg/日を6ヶ月間投与し,投与前後の血液マーカー,肝組織の検討を行った.また10週間の高脂肪食負荷マウスを用いてエゼチミブ投与による脂肪肝改善効果機序をグルコースクランプ,マイクロアレイを用いて検討した.【成績】エゼチミブ投与により,血清のAST, ALT,γ-GTP,LDLコレステロール,中性脂肪,高感度CRP,4型コラーゲン7sは有意に改善した.肝組織ではNAFLD activity score (NAS)が5.3±0.5から3.9±0.9(p=0.0067)と改善し,NASの構成因子では脂肪化が2.3±0.5から1.4±0.5(p=0.0007)と有意な改善を認めた.肝組織の炎症,肝細胞風船様膨化,線維化に投与前後で有意差を認めなかった.高脂肪食負荷マウスを用いたエゼチミブの脂肪肝改善機序の検討では,グルコースクランプ試験で肝臓の糖利用率の上昇,肝内SREBP1cの発現低下などが認められた.【結論】エゼチミブはNiemann-Pick C1 Like 1を阻害し,小腸や肝臓でコレステロールの吸収および再吸収を阻害する薬剤である.本研究は少人数,短期間の検討であるがエゼチミブのNASH治療薬としての可能性が示唆された.近年長期間,多数例での検討も行われており本検討と同様の効果が報告されている.動物実験での検討に加え,現在ヒトにおいてもエゼチミブ投与前後の肝組織のmRNAを用いて機序解明を進めており,文献的考察を含め発表する.
索引用語 NASH, エゼチミブ