セッション情報 シンポジウム16(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

肝・胆道疾患と脂質代謝を見直す-消化吸収異常の関与とその治療-

タイトル 吸S16-8:

NASH/NAFLDにおける非侵襲肝臓糖代謝評価法の開発-空腹時13C-glucose呼気試験法-

演者 松浦 知和(東京慈恵会医大・臨床検査医学)
共同演者 田中 賢(東京慈恵会医大・臨床検査医学), 中田 浩二(東京慈恵会医大・外科)
抄録 【目的】NASH/NAFLDの病態形成や進展には、肝臓のインスリン抵抗性が関与しており、肝臓の脂肪蓄積、肝臓線維化や癌化への重要な促進因子である。臨床検査において、肝臓のインスリン抵抗性を早期に、簡便かつ非侵襲的に評価することは重要である。そこで、我々は、肝臓糖代謝評価法として、空腹時13C-glucose呼気試験(FGBT)を開発し、肝臓のインスリン抵抗性を鋭敏に評価する検査法として有用であるかを検討した。【方法】健常ボランティア25名(男性13名、女性12名)および腹部US上脂肪肝を有する糖尿病(DM)患者(14名)、耐糖能異常(IGT)患者(5名)でFGBTを施行した。12時間絶食後の空腹時に、インスリンを誘導しない微量の13C-glucose(クロレラ工業株式会社)100mgを経口投与し、安静のまま、経時的に360分まで呼気バックに呼気を採取した。また、試験開始後は室内でのデスクワークのみにとどめた。試験終了後、呼気バックの13CO2濃度を赤外分光光度計POCone(大塚電子株式会社)で測定した。13CO2量を13C量に換算し、呼気中の13Cの動態を解析した。13C動態曲線からarea under the curve (13C-AUC)を算出した。また、HbA1c、HOMA-IR等との相関を検討した。【成績】100mgの13C-glucose服用により、血糖値および血中インスリンの動態には変化がなかった。健常男性と健常女性における13C-AUCの比較では、女性において男性より高い肝臓糖代謝能を示された。13C-AUCとHbA1c、HOMA-IRにはそれぞれ正の相関を認め、診断のためのカットオフ値が設定できた。脂肪肝を伴う糖尿病、IGT症例では、13C-AUCは健常者に比較し有意に低値を示した。【結論】安静空腹時における、インスリンが誘導されない状態でのglucoseの動態は、主に肝臓への糖の取り込みと代謝を反映している。本試験は、肝臓での糖新生と解糖系のバランスから観た肝機能評価法であると考えられ、NASH/NAFLDなどの肝臓インスリン抵抗性を鋭敏に診断する簡易試験として有用と考えられる。
索引用語 インスリン抵抗性, 呼気試験