セッション情報 シンポジウム16(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

肝・胆道疾患と脂質代謝を見直す-消化吸収異常の関与とその治療-

タイトル 肝S16-9:

膵切除後の脂肪肝危険因子に関する検討

演者 岡村 行泰(名古屋大大学院・消化器外科学)
共同演者 杉本 博行(名古屋大大学院・消化器外科学), 中尾 昭公(名古屋大大学院・消化器外科学)
抄録 (目的)膵切除後の経過観察をしていく上で脂肪肝は高頻度に認める病態の一つである。脂肪肝発生の危険因子に関する報告は散見されるが、統一された見解はなく、脂肪肝発症による臨床的影響に関する検討は極めて少ない。今回、当科における膵切除例に対し、これらの検討を行い、脂肪肝発生の危険因子の同定を試みた。(方法)2003年12月から2010年6月までに行った膵切除症例(膵頭十二指腸第2部切除、膵中央切除症例を除く)は367例であった。そのうち術後90日から365日の間のCT画像所見が得られ、肝転移を認めなかった102例を検討対象とした。単純CTの4点におけるHounsfield Unit値を測定し、その平均値が40以下となった症例を脂肪肝と定義し、脂肪肝群、非発生群の2群で術前、術後因子の比較検討を行った。また、脂肪肝群でその後のCT画像所見が得られた症例に対して、脂肪肝改善の有無を検討した。(結果)膵頭十二指腸切除術(PD)が67例、膵体尾部切除術が28例、膵全摘術が7例に行われていた。102例中32例(31.4%)で脂肪肝を認め、単変量解析では、膵癌、PD、術後インスリン非使用、門脈合併切除、消化酵素剤内服、止痢剤内服、術前減黄あり、術後body mass index (BMI)の3以上減少が脂肪肝発生の危険因子であった。多変量解析では、術後インスリン非使用、術後BMI減少が独立した脂肪肝発生の危険因子であった。脂肪肝群と非発生群の生存率、無再発生存率では有意差を認めなかった。脂肪肝群32例中20例でその後のCT画像が得られ、9例 (45%)で脂肪肝の改善が認められた。(結語)PD症例において術後インスリンを導入し、栄養管理を行うことが、脂肪肝発症の予防につながると考えられたが、発症予防を行うことの臨床的有用性に関しては、今後の検討課題であると考えられた。
索引用語 膵切除後, 脂肪肝