セッション情報 シンポジウム16(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

肝・胆道疾患と脂質代謝を見直す-消化吸収異常の関与とその治療-

タイトル 吸S16-10:

膵疾患術後消化吸収機能および膵内外分泌機能変化の解明と臨床応用

演者 森藤 雅彦(さんむ医療センターDELIMITER広島大大学院・病態制御医科外科学)
共同演者 村上 義昭(広島大大学院・病態制御医科外科学), 坂本 昭雄(さんむ医療センター)
抄録 【目的】膵切離時の切離断端組織学的所見と術後内・外分泌機能変化を比較し臨床現場での脂肪吸収障害予測への可能性を検討。【対象】膵体尾部切除(DP)40例、幽門輪温存膵頭十二指腸切除(PPPD)52例。【方法】膵切離断端部位のH.E.染色標本から、内分泌機能変化予測としてislet cellの面積、個数、面積比を算出、外分泌機能変化予測として残存膵実質面積率を測定。内分泌機能の変化はHbA1C、外分泌機能は13C標識混合中性脂肪呼気試験7時間13C累積回収率とCTの膵実質幅、栄養状態はBMI(Body Mass Index)を検討。【結果】DP症例:術前non-DM群(HbA1c 6.5以下)は26例(65%)、術後1年以後のDM群8例(31%)、術後non-DM群18例(69%)。術後DM群は、non-DM群に比して、islet cell面積、個数、面積比が有意に低値(P<0.05)。術後DM発症例はislet cell個数6以下、面積比2以下の症例であった。術前HbA1c6.0%以上では全例が1年目でDM、5.5%以下の症例でも10%に術後DMが発症。PPPD症例:13C呼気試験7時間13C累積回収率(%)は健常者15.5±6.0に対し、PPPD 6.8±4.8と累積回収率は術後有意に低下。(p<0.01)、累積回収率5.0%以下の消化吸収能低下症例(EPI)は、切離断端部残存膵実質面積率67.8±8.5%と累積回収率5.0%以上の症例の81.6±5.4%に比較して有意に低率で(p=0.01)、術後体重増加も少ない傾向(p<0.1)。EPIは消化酵素製剤休薬による便通異常が有意に多く,術前後体重比が低値(P<0.05).膵実質幅は術前からEPI群がnon-EPI群より有意に萎縮(P=0.029).術後もEPI群が群non-EPIより有意に萎縮(P<0.001).EPI群の膵実質幅は術後有意に萎縮し(P<0.001), non-EPI群では術前後の有意な変化なし。13C累積回収率は消化酵素製剤剤内服時が中止時より有意に改善(1.5±1.2% vs 4.6±3.0%,P<0.01)。【結論】切除断端islet cell面積比、残存膵実質面積率、HbA1c、13C標識混合中性脂肪呼気試験、術後膵実質幅は脂肪消化吸収機能検討に高い臨床応用価値がある。
索引用語 脂質消化吸収, 膵機能