セッション情報 シンポジウム12(消化吸収学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

食欲・消化吸収をめぐる生理活性物質の新展開

タイトル 消S12-8:

グルタミン酸は脂肪含有流動食摂取後早期のGLP-1分泌を促進し、食後血糖の上昇を抑制する

演者 保坂 浩子(群馬大大学院・病態制御内科学)
共同演者 草野 元康(群馬大附属病院・光学医療診療部), 財 裕明(群馬大大学院・病態制御内科学)
抄録 【目的】L-monosodium glutamate (MSG)はうま味調味料として一般に使用されるアミノ酸化合物で、内外分泌や消化管運動に影響を及ぼす物質である。今回、我々は脂肪含有流動食に添加されたMSGが、食後の糖代謝、インクレチン、胃排出、食後の腹部症状に与える影響について検討した。【方法】抗H.Pylori抗体陰性の健常人男性(n=13,平均年齢25.5歳)を対象とし、400 ml (520 kcal:うち脂肪100 kcal)の液状試験食を用い13C呼気試験(Breath ID system)による胃排出測定を2回行い、MSG(M) (2g,0.5%wt/vol)、またはコントロールとしてNaCl(N)を添加した。血糖、インスリン、グルカゴン、glucagon like peptide-1(GLP-1)、glucose-dependent insulinotropic polypeptide(GIP)を経時的に測定した。【成績】血糖は試験食摂取後30分にMSG添加時に有意に低下し(M:58.8 ± 4.4 mg/dl, N:68.2 ± 4.3mg/dl, p=0.045)、最初の60分のArea under the curve(AUC)も有意に低くなっていた(M:40.6±3.51mg・1hr/dl, N:49.2 ± 3.86mg・1hr/dl, p=0.047)。GLP-1はMSG添加時には食後早期に高く徐々に低下していくのに比べ、コントロールでは徐々に増加しており、食後30分ではMSG添加時に有意に高かった(M:58.1±15.8pmol/L, N:13.4±15.8pmol/L, p=0.035)。GIPはMSG添加の有無による変化はなかった。試験食摂取後240分までのインスリン総分泌量(AUC)に差はなかったが、MSG添加時にはインスリン濃度のピークが有意に早くなっていた(M:39.2±5.2min, N:53.1±7.3min, p=0.048)。胃排出や食後の腹部症状には両群に差はなかった。【結論】グルタミン酸は脂肪含有流動食摂取時に食後早期の血糖を抑制し、インスリンの総分泌量を変えることなく分泌のピークを早めた。これは胃排出を介したものではなく、食後早期のGLP-1分泌促進が一因となっている可能性が示唆された。
索引用語 グルタミン酸, glucagon like peptide-1