セッション情報 シンポジウム17(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

カプセル内視鏡の進歩

タイトル 内S17-2追1:

系統的カプセル内視鏡の読影教育と効率的な診療ネットワークの必要性

演者 佐藤 公(山梨大・1内科)
共同演者 大塚 博之(山梨大・1内科), 榎本 信幸(山梨大・1内科)
抄録 背景:カプセル内視鏡(CE)は小腸疾患の診療に有用であるが、その教育とともに、小腸疾患の特徴に合った効率的なCEの運用が求められている。方法:当院ではCEを導入後、2008年1月から2011年3月末までに109件(96名)の検査を実施した。1)全検査を総括し、その特徴と位置づけを明らかにする。特にOGIBについては、最終診断、他院からの紹介状況、確認できる最終出血のエピソードから検査までの時間を検討した。2)読影医の養成に向けて、経験症例の増加とともに読影所要時間がどう変化したかを検討するとともに、読影精度を評価するため、あらためて現在の読影法で再読影を行った場合の所見一致率を検討した。結果:1)CE検査目的は原因不明消化管出血精査(OGIB)が48%、小腸腫瘍精査21%、炎症性腸疾患における小腸精査20%、その他1%であった。OGIBの85%は、他院(46%)あるいは当院他科(31%)からの紹介で、最終の出血のエピソードが明らかな症例におけるCE実施までの時間は、平均162時間(5-552時間)であった。最終診断では毛細血管拡張が38%、以下、小腸潰瘍、粘膜下腫瘍であった。2)導入時は手探りであったが、2画面表示、10-15フレーム/秒を標準に、最近では4画面表示、20フレーム/秒を基本として、カプセルの位置や進み具合に応じて速度を変化させて読影を行っている。導入以来の症例を前期、中期、後期に分けると、平均読影時間はそれぞれ、76分(48-92)、52分(32-84)、32分(19-62)と有意に短縮した(P<0.05)。再読影では、粗大病変の不一致はなかったものの、微細病変では前期で6%程度過小評価されていた可能性があったが、中期以降は安定した結果であった。結論:CEの対象の約半数がOGIBで、その多くが他院、他科からの紹介であり、早期に出血源を確認、評価するための小腸疾患の特徴を踏まえた診療ネットワークの構築が重要と考えられた。系統的教育を行うことにより、読影力の効率的な習得が可能で、少なくとも30症例程度の読影が必要と考えられた。これを踏まえ現在、地域ネットワークを構築中である。
索引用語 カプセル内視鏡, 小腸