抄録 |
【背景】カプセル内視鏡検査では肝硬変患者に腸管浮腫を認めることが多く, 腸管浮腫は肝硬変による門脈圧亢進とかかわっている可能性がある. しかし, 内視鏡像と門脈圧の相関関係の有無は明らかではない. 門脈圧を直接測定することは容易ではないが肝静脈圧較差(Hepatic Venous Pressure Gradient: HVPG)が門脈圧と相関することが広く知られている. 【目的】小腸内視鏡所見とHVPGを比較検討し, 腸管浮腫がHVPGに相関しているかどうかを検討することが目的である.【方法】食道静脈瘤破裂や腹水患者25症例(59±12歳, 男性18例/女性7例, Child-Pugh 7.5±1.7:A 8例, B 15例, C 2例)対してカプセル内視鏡施行後2週間以内にHVPGを測定した. 腸管浮腫の評価はカプセル内視鏡により浮腫なし0, 腸管内腔直径が1/2以上保たれているように観察できる軽度の浮腫1, 腸管内腔直径が認められるが1/2以下2, ほぼ内腔を認めない3 (以上供覧)として十二指腸, 空腸, 回腸, 盲腸に分けてそれぞれ最も著明な部分を評価して合計した. 十二指腸はRapidのlocationを用いて判断し, 空腸と回腸の境界はカプセルの通過時間で40%口側を空腸, 60%肛門側を回腸とした. 【結果】腸管浮腫平均は3.0±3.1, HVPG平均15.9±4.3mmHgであった. 相関係数は腸管浮腫とHVPGで0.82(P=0.0003), 腸管浮腫とChild-Pughで0.68(P=0.074)であり、腸管浮腫とHVPGに強い相関を認めた.【結論】カプセル内視鏡による腸管浮腫の評価はHVPGとよく相関し, 腸管浮腫を評価することにより, HVPG値をある程度予想することが可能であると考えられた. |