セッション情報 シンポジウム17(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

カプセル内視鏡の進歩

タイトル 消S17-7:

潰瘍性大腸炎の小腸病変:カプセル内視鏡による検討

演者 日暮 琢磨(横浜市立大・消化器内科)
共同演者 遠藤 宏樹(横浜市立大・消化器内科), 中島 淳(横浜市立大・消化器内科)
抄録 【目的】潰瘍性大腸炎(UC)は原因不明の炎症性腸疾患であるが、これまでその病変は大腸に限局すると考えられてきた。しかし、近年backwash ileitisや大腸全摘後のpouchitis、といった小腸に関連した病変の報告が散見されるようになってきた。一方で小腸病変はその解剖学的な特徴により粘膜病変を直接視覚的にとらえて解析することが困難であったためまだ不明な点が多い。今回、我々はUCにおける小腸病変の実態を明らかにするためにカプセル内視鏡を用いて検討した。【対象】健常ボランティアを対照群(n=23)とし、UC患者(UC群;n=23)の小腸粘膜病変をカプセル内視鏡で評価した。UC群の平均年齢は44.8歳、罹病期間は平均83か月、DAIスコアは平均4.1点で重症に分類される症例は含まれていなかった。小腸病変は、カプセル内視鏡により炎症所見を発赤病変とびらん性病変、潰瘍性病変に分類し、その数・頻度・部位について比較検討した。また小腸粘膜炎症変化の重症度をカプセル内視鏡スコアを用いて比較し、さらにUC群については本スコアとDAIスコアとの関連についても検討した。【結果】小腸病変全体の頻度はそれぞれUC群57 %(13/23)、対照群7 %(2/23)でUC群で有意に高率であった(p<0.001)。潰瘍性病変を認めた症例は両群ともになかった。びらん病変は対照群(4%,1/23)と比べUC群(35%,8/23)で有意に高率であった(p=0.009)。また小腸病変数はUC群(5.0 ± 6.4)で対照群(0.1 ± 0.5)より有意に多く(p<0.001)、びらん性病変数についても同様の結果であった。カプセル内視鏡スコア分類は、対照群では全例正常であったのに対し、UC群では39%で軽症を認め、軽症の割合は対照群より高率であった(p=0.015)。両群とも中等症/重症に達した症例はなかった。カプセル内視鏡スコアとDAIスコアの間には相関関係を認めた(r=0.718;p<0.001)。【結論】本研究により、UCの消化管病変が大腸だけでなく小腸にも存在することが示され、さらに小腸の炎症はUCの活動性に相関している可能性が示唆された。
索引用語 カプセル内視鏡, 潰瘍性大腸炎